行政書士
佐野 雅彦
行政書士事務所ACTION代表。
IT受託会社の借入・返済・追加融資・資金繰りを一体で見ながら、
その場しのぎではない資金の整え方を支援しています。
地方公務員として25年間、制度運用と相談対応に携わった経験を踏まえ、
現在は、返済を続けながら次の借入や投資を進められるかという視点で、記事監修と実務支援を行っています。
このページでは、IT受託会社の経営者に向けて、借入・返済・追加融資・投資判断まで見据えた資金戦略の実務情報を掲載しています。
創業3年目の追加融資は拡大資金ではなく安全資金。資金余力・固定費比率・DSCRから攻められる状態を設計する視点を解説。
目次
資金戦略を設計する行政書士|外部CFO型パートナー
創業から2〜3年。
売上は月商1,000万〜3,000万円規模まで伸び、黒字も確保できている。一方で、創業融資の元本返済が本格化し、借入残高は3,000万〜8,000万円。資金余力は2〜3か月程度。
この局面で多くの経営者が抱く問いは、
「追加融資で一気に拡大すべきか」というものです。
しかし本質的な問いは別にあります。
自社は「攻められる資金構造」になっているか。
攻めとは売上拡大ではありません。
攻めとは、資金構造を設計する行為です。
追加融資というと、「守り」か「攻め」かの二択で語られがちです。
しかし資金戦略の観点では、
攻めと安全は対立概念ではありません。
むしろ、
安全余力を厚くした企業だけが攻められる
という構造になっています。
ここで確認すべき最初の指標が「資金余力◯か月」です。
資金余力=(現預金 − 短期返済予定額)÷ 月間固定費
一般的な目安は以下です。
資金余力が2〜3か月の状態で、採用や設備投資に踏み切る場合、少しの売上変動で意思決定が止まります。
攻めとは、意思決定を止めない状態をつくることでもあります。
次に見るべきは固定費比率です。
固定費比率=固定費 ÷ 売上高
目安としては、
固定費比率が50%を超える状態で人材を増やすと、資金消耗スピードは一気に上がります。
とくに創業3年目前後は、
が同時に発生しやすい。
追加融資を「拡大資金」と捉えるのではなく、
固定費増加を吸収する安全余力の確保と捉えられるかどうかが分岐点です。
攻めの判断で必ず確認すべき指標が、DSCR(債務返済余裕率)です。
DSCR=営業キャッシュフロー ÷ 年間元利返済額
目安は次の通りです。
追加融資後のDSCRが1.3を下回る場合、攻めというより「綱渡り」になります。
重要なのは、
借入前ではなく、借入後のDSCRを試算すること
です。
攻められる企業は、必ずこの逆算をしています。
もう一つの判断軸が投資回収期間です。
たとえば、
にもかかわらず、借入期間が5年で返済負担が重い場合、初期1〜2年は資金流出が続きます。
原則として、
投資回収期間 ≦ 借入期間
が基本設計です。
回収期間が不確実な投資ほど、安全資金の厚みが必要になります。
ここで注意すべきなのは、業種ごとのキャッシュ構造差です。
・仕入先行
・売上増=資金需要増
・拡大時ほど資金が消耗
・人件費が固定費化
・売上減少時の調整が難しい
・大型投資
・回収まで長期
同じ月商2,000万円でも、
必要な安全余力は全く異なります。
攻められるかどうかは、
業種特性と固定費構造の掛け算で決まります。
2月は決算対策の議論が増える時期です。
しかし本質的には、
を設計できるタイミングでもあります。
追加融資は「今足りないから借りる」のではなく、
来期の安全余力を設計するために借りる
という発想に転換できるか。
ここに攻めの本質があります。
攻めを売上成長と同義にすると、資金戦略は後手に回ります。
攻めとは、
これらを満たした上で意思決定することです。
黒字であることと、攻められることは別問題です。
創業3年目は、
「守った企業」だけが「攻められる」局面に入ります。
追加融資は拡大のための資金ではなく、
意思決定を止めないための安全資金と捉えられるか。
自社の
を並べたとき、攻められる状態にあるでしょうか。
答えは一般論では出ません。
自社の前提条件の整理からしか始まりません。
資金戦略は、一般論だけで決められるものではありません。
業種や固定費構造、入金条件によって最適解は変わります。
重要なのは、「借りられるか」ではなく「今、借りるべきか」を判断できる状態をつくることです。
まずは自社の前提条件を整理することから始めてみてください。
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