行政書士
佐野 雅彦
行政書士事務所ACTION代表。
IT受託会社の借入、返済、追加融資、資金繰りを
一体で見ながら、
借入後も会社が無理なく続くための判断を支援しています。
地方公務員として26年間、
制度運用と相談対応に携わった経験をもとに、
制度、数字、資金の流れを整理し、
社長が次の判断をしやすい状態をつくることを大切にしています。
資金繰り、融資、返済、入金サイト、採用・投資判断を、悩みや目的から探せます。
[1.IT受託会社向け資金戦略]
手元資金をできるだけ減らしたくないと考えるのは、経営者として自然なことです。
ただし、預金残高を守ることだけを優先すると、採用、外注、開発環境の整備など、必要な投資の判断が難しくなることがあります。
反対に、将来の売上を期待して資金を使いすぎれば、入金が遅れたときに会社が動きにくくなります。
大切なのは、「使うか、使わないか」を感覚で決めるのではなく、投資後に残る資金と、その後のお金の戻り方を確認することです。
預金残高は、会社の安全性を考えるうえで重要です。
しかし、同じ1,000万円でも、その意味は会社によって異なります。
毎月の人件費や外注費が大きい会社では、数か月で資金が減る可能性があります。一方、固定費が比較的軽く、入金も安定している会社では、より長く事業を維持できるかもしれません。
確認すべきなのは預金残高の金額だけではありません。
これらを一緒に見ることで、手元資金が自社にとって十分かを考えやすくなります。
IT受託会社では、売上より先に支払いが発生することがあります。
例えば、エンジニアを採用すれば、担当案件が決まる前から給与や社会保険料が発生します。
外注先を増やす場合も、顧客からの入金より外注費の支払いが先になる契約があります。
受託開発では、作業が進んでいても、検収が完了するまで請求できないことがあります。追加要件や納期の変更によって、入金が予定より遅れる可能性もあります。
このため、売上や利益の予測だけでは、投資後の資金繰りを判断できません。
入金日と支払日を月ごとに並べる必要があります。
最初に、投資代金を支払った後の現預金を確認します。
その金額から、給与、社会保険料、外注費、家賃、借入返済、納税などを何か月支払えるかを見ます。
必要な資金は会社によって異なります。特定の月数だけで安全・危険を判断するのではなく、入金条件や案件の変動も含めて考えることが大切です。
投資をした月から、すぐに売上や入金が増えるとは限りません。
採用であれば、入社後の教育や待機期間があります。
営業担当者の採用なら、案件の獲得から契約、稼働、請求、入金までに時間がかかります。
開発環境への投資でも、作業効率の向上が利益や資金に表れるまでには期間が必要です。
投資額だけでなく、入金につながるまでに追加で必要となる費用も確認します。
利益が出ていても、売掛金が増えて現金化されていなければ、支払いに使える資金は増えません。
そこで確認したいのが、営業活動による資金の増減です。
決算書のキャッシュフロー計算書がない場合でも、現預金、売掛金、買掛金、未払金などの増減を税理士に確認すると、お金の流れを把握しやすくなります。
本業から継続的に資金が生まれているか。それとも、借入によって現預金を維持しているのか。この違いは投資判断に影響します。
借入を使って投資する場合は、新しい借入だけを見ないようにします。
既存借入を含めた年間返済額と、返済後に残る資金を確認します。
返済余力を見る指標の一つにDSCRがあります。これは、返済に充てられる資金が、元金と利息の支払いに対してどの程度あるかを見るものです。
ただし、計算方法や判断基準は目的によって異なります。特定の数値だけで結論を出さず、月次の資金繰り表と一緒に確認します。
投資資金をすべて現金で支払えば、借入返済は増えません。
一方で、運転資金まで減らすと、顧客からの入金が遅れたときに対応しにくくなります。
借入を使えば手元資金を残せる場合がありますが、その後は元金と利息の支払いが続きます。
どちらが正しいかは一律に決められません。
次の3つを比較することが重要です。
それぞれについて、投資後6か月から1年程度の入金、支払い、返済を並べます。
融資を受けられるかではなく、実行後も会社が無理なく回るかで判断します。
人手が必要な場合でも、選択肢は採用だけではありません。
採用は毎月の固定費が増えますが、社内に知識を蓄積しやすくなります。
外注は案件に応じて調整しやすい一方、顧客からの入金より支払いが先になる可能性があります。
案件を受けない判断は売上機会を減らしますが、資金と社内の稼働を守る場合があります。
それぞれの選択肢を売上だけで比べず、先に出るお金、入金までの期間、既存返済への影響で比較します。
数字を確認した結果、投資を見送る判断もあります。
その場合は、「不安だから見送る」だけで終わらせず、再検討する条件を決めておくと判断しやすくなります。
例えば、次のような条件です。
条件を決めておけば、必要以上に投資を先送りすることも、準備が整わないまま実行することも避けやすくなります。
投資を決める前に、次の項目を一枚の表にまとめてみてください。
手元資金を守ることと、必要な投資を行うことは、どちらか一方を選ぶ問題ではありません。
投資後にいくら残り、その資金がどのように戻るのかを確認し、社長自身が判断できる材料を整えることが大切です。
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