行政書士
佐野 雅彦
行政書士事務所ACTION代表。
IT受託会社の借入・返済・追加融資・資金繰りを一体で見ながら、
その場しのぎではない資金の整え方を支援しています。
地方公務員として25年間、制度運用と相談対応に携わった経験を踏まえ、
現在は、返済を続けながら次の借入や投資を進められるかという視点で、記事監修と実務支援を行っています。
このページでは、IT受託会社の経営者に向けて、借入・返済・追加融資・投資判断まで見据えた資金戦略の実務情報を掲載しています。
[2.資金戦略の基本原則]
設備投資は営業キャッシュフロー(以下、「営業CF」)で判断すべきか、借入で判断すべきか。本記事では営業CF、資金余力、DSCR、固定費構造の観点から設備投資の資金戦略を整理します。
目次
設備投資を検討する際、多くの経営者が最初に考えるのは次のどちらかです。
「今、資金があるから自己資金で投資する」
「借入が通りそうだから設備投資をする」
しかし資金戦略の観点では、この判断順序は必ずしも合理的とは言えません。
重要なのは
設備投資を営業キャッシュフローで支えられるのか
という視点です。
資金があるかどうか、借入が可能かどうかは二次的な問題です。
本来の判断は
設備投資が企業のキャッシュ構造に耐えられるか
という点から始まります。
設備投資は資金構造を大きく変える経営判断です。
設備投資によって変化する要素は主に3つあります。
・固定費
・減価償却費
・借入返済
設備投資は多くの場合、固定費構造を押し上げます。
例えば
設備リース
設備保守費
人員増加
などです。
さらに借入を伴う場合、返済が発生します。
つまり設備投資とは
将来のキャッシュフローに固定的な負担を追加する行為
とも言えます。
この構造を理解せずに投資を決めると、
売上が伸びているのに資金が不足する、
という状況が起こります。
設備投資を考えるうえで最も重要なのは
営業キャッシュフロー(営業CF)
です。
営業CFとは、本業によって生まれる現金です。
設備投資は原則として
営業CFで回収される必要があります。
もし営業CFが小さい企業が大きな設備投資を行うと
次の問題が起きます。
・返済負担の増加
・資金余力の低下
・追加融資依存
つまり設備投資の安全性は
営業CFと投資規模のバランス
で決まります。
利益ではなく、
キャッシュで回収できるか
が判断基準になります。
設備投資では資金の期間構造も重要です。
資金には
短期資金
長期資金
があります。
設備投資は基本的に
長期資金で調達するべき資金
です。
もし設備投資を短期資金で調達すると
返済が短期間に集中します。
結果として
資金余力(月数)が急速に縮小します。
資金戦略では
資金の用途と返済期間を一致させる
ことが基本原則です。
設備投資の判断では、いくつかの数値が参考になります。
資金余力
= 現預金 ÷ 月間固定費
目安
3か月未満
資金リスク高い
6か月以上
一定の安全性
設備投資によって資金余力が大きく減る場合は注意が必要です。
DSCR
= 営業CF ÷ 年間返済額
1.0未満
返済能力不足
1.2以上
一定の安全ライン
設備投資で借入を増やす場合、この指標が重要になります。
固定費 ÷ 売上
設備投資は固定費を増やす可能性があるため、固定費比率の上昇にも注意が必要です。
金融機関が設備投資を評価する際、特に確認するのは次の3点です。
・投資の目的
・営業CF
・返済余力
設備投資そのものは否定されるものではありません。
むしろ金融機関は
成長投資には前向きな傾向があります。
ただし重要なのは
返済可能なキャッシュ構造かどうか
です。
金融機関は利益よりも
営業CF
DSCR
を重視して投資の安全性を判断します。
(参考)
中小企業庁
中小企業の財務指標解説
https://www.chusho.meti.go.jp
設備投資の意味は業種によって大きく異なります。
例えば
製造業
設備投資が生産能力を決める
運輸業
設備が事業そのもの
小売業
設備より在庫投資が重要
建設業
設備投資より運転資金が重要
つまり設備投資の適正水準は
業種ごとのキャッシュ構造
によって変わります。
同じ投資額でも
資金リスクは業種によって大きく異なります。
設備投資の判断で重要なのは
「資金があるか」
ではありません。
重要なのは
・営業CFで回収できるか
・資金余力は維持できるか
・返済能力は確保できるか
という資金構造です。
設備投資は企業の成長に不可欠ですが、
同時に
固定費と返済負担を増やす経営判断
でもあります。
だからこそ
営業CF
資金余力
DSCR
といった視点から
投資の安全性を整理する必要があります。
資金戦略は、一般論だけで決められるものではありません。
業種や固定費構造、入金条件によって最適解は変わります。
重要なのは、「借りられるか」ではなく「今、借りるべきか」を判断できる状態をつくることです。
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