行政書士
佐野 雅彦
行政書士事務所ACTION代表。
IT受託会社の借入・返済・追加融資・資金繰りを一体で見ながら、
その場しのぎではない資金の整え方を支援しています。
地方公務員として25年間、制度運用と相談対応に携わった経験を踏まえ、
現在は、返済を続けながら次の借入や投資を進められるかという視点で、記事監修と実務支援を行っています。
このページでは、IT受託会社の経営者に向けて、借入・返済・追加融資・投資判断まで見据えた資金戦略の実務情報を掲載しています。
[2.資金戦略の基本原則]
決算書は税務資料ではなく、資金戦略の判断材料です。利益とキャッシュのズレ、固定費、返済余力をどう見るかについて、中小企業経営者向けに整理します。
決算書を確認している経営者は少なくありません。
ですが、実務の現場でよく見かけるのは、損益計算書の黒字・赤字だけで会社の安全性を判断してしまうことです。ここに、資金戦略上の大きな盲点があります。
会計上の利益は、現金の動きと一致しません。
中小企業の会計でも、収益や費用は現金の受払そのものではなく、発生した期間に対応させて計上する考え方が取られています。
売上が立っていても未回収の売掛金であれば、資金はまだ手元にありません。反対に、減価償却費のように現金支出を伴わない費用もあります。
だから、黒字なのに資金繰りが苦しくなることは、例外ではなく構造として起こり得ます。
この前提に立つと、決算書は「税務申告のための資料」ではなくなります。
貸借対照表と損益計算書は、過去の結果をまとめた書類である一方で、次に借りるべきか、投資してよいか、固定費を維持できるかを判断するための材料でもあります。
中小企業庁の資料でも、会計情報は投資判断や経営改善、資金調達力の強化に活用すべきものとして整理されています。
資金戦略として決算書を見るとき、まず確認したいのは「利益が出ているかどうか」ではなく、「営業活動で資金を生み出せているか」です。
J-Net21でも、損益計算書の収益・費用とキャッシュの収入・支出は一致しないこと、企業の業績を経営活動でどれだけキャッシュを生み出したかで評価する見方が示されています。
営業キャッシュフローが安定していないのに、設備投資や新規採用だけを先行させる経営は、売上が伸びても資金余力を削りやすい。
拡大がそのまま安全につながるわけではない、という視点が必要です。
次に見るべきは、貸借対照表の「厚み」です。
安全性分析の基本指標として、J-Net21は流動比率と自己資本比率を挙げています。
流動比率は、1年以内に現金化できる資産が1年以内に返済すべき負債をどれだけカバーしているかを見る指標で、これが下がると短期の支払い余力が弱くなります。
自己資本比率は、返済不要の資本がどれだけあるかを見る指標で、低いほど外部負債への依存が強い構造になります。
ただし、ここでも比率だけで安心しないことです。
たとえば流動資産が多く見えても、その中身が回収の遅い売掛金や動きの鈍い在庫であれば、支払原資としては弱い。
逆に、自己資本比率が高くなくても、営業キャッシュフローが安定し、返済原資の見通しが立つ会社はあります。
資金戦略では、数字の見栄えより、どの資産がいつ現金になるか、どの負債がいつ返済期日を迎えるかを並べて考える必要があります。
借入判断では、さらに一段踏み込んで「返せるか」を見なければなりません。
日本政策金融公庫の経営改善計画書策定の手引では、債務償還年数を「借入金等の返済しなければならない債務をキャッシュフローで除した年数」と整理しています。
つまり、借入残高の多寡だけではなく、その借入が営業活動から生み出す資金で何年かけて返せる構造なのかが問われるということです。借りられる状況にあることと、借りるべき状況にあることは、同じではありません。
経営判断に落とし込むなら、少なくとも三つの確認が必要です。
第一に、現預金が月次固定費の何か月分あるか。これは制度上の正解がある数字ではありませんが、資金余力を考えるうえで避けて通れない視点です。人件費、家賃、リース料、借入返済など、売上が落ちても出ていく固定的支出を基準に見ます。
第二に、営業キャッシュフローが単発ではなく継続してプラスか。一時的な補助要因や売却益ではなく、本業で資金を残せているかを見ます。
第三に、新規借入や設備投資の後でも返済負担に耐えられるか。投資後の売上計画が未達でも回るのか、入金サイトが延びた場合でも持つのか、という前提で見るべきです。
ここで業種差も無視できません。
製造業は在庫と設備の負担が重くなりやすく、建設業は入金と支払の時期差が大きくなりやすい。
小売業は在庫回転、サービス業は人件費比率、卸売業は売掛債権の回収条件が資金繰りを左右します。
だから、同じ売上高や利益率でも、必要な手元資金は業種によって変わります。決算書を横並びで比較するだけではなく、自社の商流、在庫、入金条件、固定費構造を重ねて読むことが、資金戦略としては欠かせません。
決算書を見る目的は、会計知識を増やすことではありません。
次の一手を誤らないためです。
利益が出ているから借りてよい、赤字だから投資できない、という単純な話ではありません。
重要なのは、どこで現金が増減し、どこに固定的な負担が残り、借入や投資がその構造を強くするのか、弱くするのかを見抜くことです。
決算書は、そのための出発点として読むべき資料です。
資金戦略は、一般論だけで決められるものではありません。
業種や固定費構造、入金条件によって最適解は変わります。
重要なのは、「借りられるか」ではなく「今、借りるべきか」を判断できる状態をつくることです。
まずは自社の前提条件を整理することから始めてみてください。
当事務所は、IT受託会社について、
借入後の返済、入金時期、人件費や外注費の支払い、採用予定などを見ながら、
借入、返済、採用、投資の判断をしやすくする支援を主に行っています。
そのため、次のような方に向いています。
・売上はあるが、手元のお金に不安がある
・借入だけでなく、返済や今後の採用までふまえて考えたい
・その場しのぎではなく、これから先の資金の流れを整理したい
・単発の答えではなく、経営判断に使える形で見直したい
一方で、次のようなご相談は対象外です。
・情報収集だけを目的としたご相談
・一度だけ答えを聞いて終わるご相談
・個人事業主の方からの一般的なご相談
・経理代行や事務処理の外注先を探しているご相談
初回面談は、オンライン60分・税込11,000円です。
初回面談では、
今の状況、ご相談の目的、借入や返済の状況を確認しながら、
何が今の資金負担になっているか
どの支援が合いそうか
を一緒に整理します。
まずは、対象に当てはまるかをご確認のうえ、お問い合わせください。
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