※この記事は、お客様の了解を得たうえで、守秘義務に配慮し、事実関係の一部を加工して掲載しています。
ご相談の背景
ご相談いただいたのは、飲食店を複数運営する事業者でした。
売上が大きく落ち込んでいたわけではありません。
複数店舗を運営し、一定の売上は維持できていました。
しかし、経営者の実感としては、手元に資金が残りにくい状態が続いていました。
原材料費や人件費は上がっている。
家賃や水道光熱費など、毎月出ていく固定費も重い。
そこに、過去に組んだ短期資金の返済が重なっていました。
表面的には、売上がある会社です。
しかし、返済を終えたあとに残る資金が薄く、採用や販促など次の施策に動く余力が持ちにくい状態でした。
このとき必要だったのは、単に追加で資金を借りることではありません。
まず確認すべきだったのは、
なぜ売上があるのに資金が残らないのか
という資金の流れでした。
整理したこと
最初に行ったのは、月次の入金と支出の整理です。
売上、原材料費、人件費、家賃、水道光熱費、その他固定費、そして既存借入の返済額を並べました。
そのうえで、
- どの水準の売上で資金が残るのか
- どの費用が資金繰りを圧迫しているのか
- 毎月の返済後に、どれだけ手元資金が残るのか
- 既存借入の返済予定を反映した場合の資金推移を、金融機関への説明資料としてどう示すか
を確認しました。
この事例で大きかったのは、短期資金の返済負担でした。
短期で借りた資金は、必要な場面では有効です。
ただ、本来は中長期で回収していく投資や、継続的な運転資金の不足を短期返済で支え続けると、毎月の資金繰りを圧迫します。
この会社でも、利益がまったく出ていないというより、返済条件と事業の回転が合っていないことが、手元資金を細らせる大きな要因になっていました。
支援した内容
当事務所では、お客様から伺った入出金予定と既存借入の返済予定を資金繰り表に整理し、金融機関へ事情を説明するための資料を作成しました。
既存借入の条件変更が必要かどうか、また変更可能かどうかは、お客様と金融機関が協議・判断する事項です。当事務所は、その協議に用いる資金繰り表や事業状況説明資料の作成を支援しました。
具体的には、お客様から示された返済予定額を月次の資金繰り表へ反映し、店舗運営に伴う入出金と手元資金の推移を複数の前提で整理しました。
そのうえで、金融機関へ説明するための資料を整えました。
金融機関への説明資料には、条件変更の希望だけでなく、売上・費用・返済予定などの客観的な情報を記載しました。
大事なのは、
- 売上はどの程度維持できているのか
- 固定費と変動費はどのように推移しているのか
- 現在の返済条件では、どこに無理が出ているのか
- 条件を見直すことで、今後の事業継続にどうつながるのか
を整理して伝えることです。
資金繰りは、数字を並べるだけでは十分ではありません。
その数字が、実際の店舗運営や人員体制、仕入れ、販促判断とどうつながっているかを説明できる状態にする必要があります。
金融機関との協議後の状況
お客様と金融機関との協議の結果、返済条件が変更され、月々の返済額が変更されました。条件変更の可否・内容は金融機関が判断したものです。
これにより、短期的な資金逼迫は一定程度和らぎました。
ただし、この事例で重要だったのは、返済額が下がったこと自体ではありません。
返済後に残る資金の厚みが少し生まれたことで、経営者が月末の資金だけに追われず、次の判断をしやすい状態に近づいたことです。
資金繰りが苦しいと、判断はどうしても目先に寄ります。
採用したほうがいいのか。
販促を続けるべきか。
メニューや価格を見直すべきか。
店舗ごとの収支をどう見るべきか。
本来考えるべきことがあっても、毎月の返済が重すぎると、判断の余白がなくなります。
今回の支援では、借入後の返済予定を含む資金の流れを、金融機関へ提出する資料として整理しました。
この事例で大切だったこと
この事例が示しているのは、資金繰りの苦しさは、売上不足だけで説明できないということです。
売上がある会社でも、返済条件が事業構造と合っていなければ、資金は残りません。
特に複数店舗を運営している場合、固定費の総額は大きくなります。
原材料費や人件費が少し上がるだけでも、手元資金への影響は大きくなります。
その状態で返済負担が重いと、売上が維持できていても、資金繰りは苦しくなります。
だからこそ、見るべきなのは、売上や借入残高だけではありません。
返済後に、会社にいくら残るのか。
その資金で、翌月以降の店舗運営を続けられるのか。
次の施策に動く余力があるのか。
これらを資金繰り表に反映することで、金融機関へ説明するための基礎資料になります。
まとめ
資金繰りに違和感があるとき、経営者は「追加で借りられるか」を考えがちです。
もちろん、追加資金が必要な場面もあります。
既存借入の返済予定が資金繰りに与える影響も、追加資金の希望とあわせて資料上で確認することができます。
売上があるのに資金が残らないときは、売上不足だけで判断しないことが大切です。
まずは、月次の入金、固定費、変動費、既存借入の返済額を並べて、返済後に何が残っているのかを確認する。
その資料をもとに、お客様が金融機関や必要な専門家へ相談し、追加借入・条件変更・事業上の対応を判断します。
資金調達は、借りることが目的ではありません。
借りた後、返済が始まった後も、事業を続けられる状態をつくるための手段です。
資金繰りに違和感があるときほど、まずは「返済後に会社に何が残っているか」を整理することが大切です。
【業務範囲について】
本事例における当事務所の支援は、行政書士の業務範囲で、金融機関へ提出する資金繰り表・事業状況説明書その他書類を作成したものです。当事務所が借入条件の変更を決定したり、金融機関との法律上の交渉を代理したり、追加融資・条件変更の実現を保証したりするものではありません。融資・返済条件は、お客様と金融機関との協議を経て金融機関が審査・決定します。債務整理、法的紛争および法律上の交渉は弁護士、税務・会計は税理士、労務・社会保険は社会保険労務士などの業務範囲となり、必要に応じて適切な有資格者と連携します。