IT受託会社専門|借入前の判断材料を整理する行政書士
はじめに
4月は、契約を更新する会社が多い時期です。
このとき、経営者が頭を悩ますのが、「単価を見直すか、このまま据え置くか」という判断です。
ただ、IT受託会社では、この話をすぐに営業の話だけで決めない方がよいことがあります。
先に見ておきたいのは、「この単価のままで、これから数か月お金が足りるか」という点です。
たとえば、4月に仕事をしても、入金は6月末ごろになる。
その一方で、外注費や人件費、家賃、ソフト利用料、広告費などは、その前に出ていきます。
つまり、売上がある会社でも、手元のお金が先に細くなることがあります。
4月の単価据え置きは、6月や7月の資金繰りに効いてくる。
ここを見ないまま「今年もこの条件でいこう」と決めると、あとから動きにくくなることがあります。
なぜあとから効いてくるのか
IT受託会社では、仕事をした日と、お金が入る日が同じではありません。
特に受託開発やWeb制作では、納品して確認が終わってから請求し、その後に入金される流れになりやすいです。
そのため、4月に働いた分のお金が入るのは、2〜3か月後になることがあります。
でも、そのあいだも、外注費や給料は払わなければなりません。
ここで起きやすいのが、「今月は回っているから大丈夫」という判断です。
けれど、資金繰りで大事なのは、今日の残高だけではありません。
先に出るお金と、あとから入るお金の差を見る必要があります。
売上があるのに、お金が苦しくなることがある
IT受託会社では、案件があると安心しやすいです。
ただ、それだけで安全とは言えません。
この形では、稼働が落ちると売上が下がりやすく、しかも入金は後から来ます。
だから、次のようなことが起きると、資金繰りが苦しくなりやすいです。
- 稼働率が10〜15ポイント落ちる
- 検収が1か月遅れる
- 単価改定が3か月遅れる
- 外注の比率が上がる
このうちどれかひとつでも起きると、帳簿の上では大きな赤字に見えなくても、手元資金だけ先に減ることがあります。
IT受託会社で見るべきなのは、売上の大きさだけではなく、お金が出る順番と入る順番です。
借入の前に確認したい3つの判断基準
1.固定費を何か月まかなえるか
今ある現預金で、すぐには減らせない支出を何か月払えるかを見ます。
人件費、役員報酬、家賃、通信費、ソフト利用料、急には切れない外注費などが対象です。
たとえば、毎月の固定費が220万〜280万円で、現預金が700万〜900万円ある会社なら、表面上は3〜4か月ほど持つように見えます。
でも、未回収の売上が遅れたり、追加の外注や広告費が出たりすると、実際にはもっと短くなることがあります。
IT受託会社では、入金まで60日前後かかる一方、支払いは先に出ます。
そのため、固定費をカバーできる期間が3か月を切るかどうかは、一つの警戒ラインになりやすいです。
3か月を切ると、単価交渉を待つのか、借入を先に考えるのか、選べる幅が狭くなりやすいからです。
2.今の残高ではなく、先3か月でどれだけ減るか
次に見たいのは、今いくらあるかではなく、先3か月でどこまで減るかです。
見るときは、次のような場面を置いてみると分かりやすくなります。
- 稼働率が10ポイント下がった
- 検収が1か月遅れた
- 単価改定が3か月進まなかった
- 外注の割合が上がった
こうしてみると、売上はあるのに、月末のお金が思ったより早く減る月が見えてきます。
ここを見ないと、「まだ残高はあるから大丈夫」と考えやすくなります。
ですが、資金繰りでは、残高そのものより、減る速さの方が重要になることがあります。
3.単価据え置きを「利益の話だけ」で見ていないか
単価を上げられなかったとき、多くの会社は「利益が少し減る」という見方をします。
ただ、IT受託会社では、それだけでは足りません。
入金が2か月後、3か月後になる会社では、単価据え置きの影響はあとから資金残高に出ます。
ここまで見えて、初めて比較できます。
このまま単価交渉を優先するのか。
外注の使い方を見直すのか。
それとも借入を先に考えるのか。
順番を決めるには、まず数字の根拠が必要です。
当事務所は、税務申告や会計処理そのものを行う立場ではありません。
その前に、借入・返済・単価見直し・外注比率の変化をふまえて、
「今のままで資金が回るか」
「借入を先に考えるべきか」
を整理する立場です。
モデル事例
受注はあり、経営者にも強い不安はありませんでした。
ただ、入金はおおむね60日後で、案件によってはもっと遅れていました。
一方で、外注費、人件費、家賃、ソフト利用料は毎月出ていきます。
その状態で、単価改定を見送り、稼働率が少し落ちる月を置いてみると、見た目より余裕が薄くなりました。
ここで整理したのは、「いくら借りられるか」ではありません。
固定費を何か月まかなえるか。
先3か月でどれだけ減るか。
単価を見直さないと、一番お金が少なくなる時点がどこまで下がるか。
その順番で見たうえで、単価交渉を待つのか、借入準備を先に考えるのか、外注の使い方を見直すのかを比べやすい状態に整えました。
同じIT受託会社でも、気をつけるべき点は違う
Web制作や受託開発が多い会社
納品と検収のタイミングで入金がぶれやすいです。
そのため、売上額だけでなく、いつ請求できて、いつ入金されるかを先に見た方が判断しやすいです。
保守運用や準委任が多い会社
毎月の売上が立ちやすい反面、単価の見直しが遅れると、少しずつ会社に残るお金が薄くなります。
急に悪くなりにくいので、気づくのが遅れやすい面があります。
SES比率が高い会社
待機が1〜2名出るだけで、お金の余裕が縮みやすいです。
外注依存型なら、先に払う外注費が重くなりやすいです。
同じIT受託会社でも、どこで資金が詰まりやすいかはかなり違います。
まとめ
4月の契約更新は、単価や条件を見直す時期です。
ただ、IT受託会社では、それを営業の話だけで決めると危ないことがあります。
入金まで60日前後かかる。
外注費や人件費は先に出る。
稼働率は毎月同じではない。
こうした条件が重なると、売上があっても、手元のお金が先に細くなります。
だから先に確認したいのは、借りられるかどうかではありません。
固定費を何か月まかなえるか。
この先3か月でお金がどこまで減るか。
単価据え置きが続いたとき、一番お金が少なくなる時点がどこまで下がるか。
ここが見えてはじめて、借りるか、待つか、ほかの手を先に打つかを落ち着いて比べられます。
※本事例は実際の相談内容をもとに再構成したモデルケースです。
守秘義務の観点から一部表現を調整しています。
自社の数字をどう整理すればよいか迷う場合は
資金戦略は、一般論で決められるものではありません。
同じIT受託会社でも、入金サイトや固定費の重さによって、打つべき手は変わります。
重要なのは、「借りられるか」ではなく「今、借りるべきか」を判断できる状態をつくることです。
自社も同じように、単価据え置きの前に資金の流れを整理したい場合は、サービス一覧をご確認ください。
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