全国対応|支援事例集

IT受託会社支援を中心に、 関連する支援も含めて、資金戦略を実務でどう組み立てているかをまとめた事例です。

[1.資金戦略・財務顧問事例]

【支援事例】売上はあるのに資金が残らないIT受託会社が、融資前に資金構造を見直したケース

IT受託会社専門|借入前の判断材料を整理する行政書士

はじめに

月末に通帳やネットバンキングの残高を見る。
売上は立っている。

請求書も出している。

税理士からも「大きく赤字ではない」と聞いている。

それでも、手元資金に余裕がない。

この状態で、融資を受けるべきか。
それとも、もう少し様子を見るべきか。

年商3,000万円〜6,000万円規模のIT受託会社では、この判断で迷いがちです。

理由は、売上や利益だけを見ても、実際の資金の動きが見えにくいからです。

特にWeb制作や受託開発では、入金は後になり、人件費や外注費は先に出ていきます。

案件が増えているのに、資金に余裕が出ないこともあります。

融資を考える前に必要なのは、まず自社の資金構造を確認することです。

売上があるのに資金が残らない理由

売上があるのに資金が残らない会社では、利益の問題だけではなく、入金と支払いのタイミングがずれていることが多くあります。

たとえば、月末締め翌々月末払いの案件では、入金までおおむね60日かかります。

これが入金サイト60日です。

一方で、人件費は毎月発生します。

外注費も、月末払いまたは先払いに近い形で出ていくことがあります。

つまり、売上が立ってから入金されるまでの間に、先に支払いが続くのです。

このズレがあると、売上は増えているのに、口座残高は増えません。

むしろ案件が増えた直後ほど、外注費や人件費が先に重くなることがあります。

IT受託会社では、案件増加が資金余力を減らすことがある

一般的には、案件が増えれば資金も増えるように感じます。

しかし、IT受託会社では必ずしもそうではありません。

受託開発やWeb制作では、先に作業が始まります。

社内メンバーの工数がかかり、外注先への支払いも発生します。

広告費を使って案件を獲得している場合は、売上があがる前に費用が出ます。

この状態で入金が60日後になると、案件が増えた分だけ、一時的に資金が必要になります。

特に注意したいのは、外注費の先払い構造です。

元請からの入金は2か月後なのに、外注先には翌月末に支払う。

あるいは着手時に一部支払う。

こうした条件が重なると、売上規模に比べて手元資金が心許なくなります。

売上が増えたから安心、とは言い切れません。

よくある誤解:黒字なら融資はいらない

黒字であれば資金繰りに問題はない。
そう考えたくなる場面があります。

ただ、黒字かどうかと、手元資金が足りるかどうかは別の話です。

黒字でも、入金が遅れれば資金は不足します。

外注費や人件費が先に出れば、口座残高は減ります。

借入返済がある場合は、利益計算とは別に毎月現金が出ていきます。

税理士の月次資料は、会社の成績を確認するうえで大切です。
ただし、月次資料だけでは、来月・再来月の資金判断までは見えにくいことがあります。

資金判断では、利益だけでなく、次の現金の動きを見る必要があります。

いつ入金されるのか。
いつ外注費を支払うのか。
人件費はいくら固定で出ていくのか。
借入返済はいくらあるのか。

この順番で見ないと、融資が必要かどうかも判断しにくくなります。

融資判断の前に見るべき数字

融資を考える前に、まず確認したい数字があります。

代表的なものは、次の項目です。

  • 現在の手元資金
  • 毎月の固定費
  • 人件費
  • 外注費の支払時期
  • 入金サイト
  • 既存借入の返済額
  • 3か月先までの入金予定
  • 3か月先までの支払い予定

ここで特に重要なのが、「固定費カバー月数」です。

「固定費カバー月数」とは、現在の手元資金で、毎月必ず出ていく支払いを何か月分まかなえるかを見る考え方です。

たとえば、毎月の固定費が300万円で、手元資金が900万円なら、単純計算では3か月分です。

ただし、外注費が大きく先に出る月があれば、この余力はすぐに減ります。

入金が遅れれば、さらに短くなります。

IT受託会社では、少なくとも3か月分、状況によっては6か月分程度の資金余力を見ておきたい局面があります。

ただし、これは一律の正解ではありません。

継続案件が多く、毎月の入金が読みやすい会社と、単発の大型案件が中心で検収が後ろにずれやすい会社では、必要な資金余力は変わります。

借入は不安の穴埋めではなく、構造を見て判断する

資金に余裕がないと、借入で口座残高を厚くしたくなります。

もちろん、借入が必要な局面はあります。
ただし、不安だから借りる、という順番にすると、借入後の判断が重くなります。

借入には返済があります。
借りた直後は資金が増えますが、その後は毎月返済が出ていきます。

たとえば、借入後に毎月20万円〜30万円の返済が増える場合、その分だけ固定支出が増えます。そこに人件費、外注費、広告費が重なると、資金余力は思ったより早く減ることがあります。

だからこそ、融資判断の前には、次の問いを置く必要があります。

今いくら足りないのか。
なぜ足りないのか。
一時的な入金ズレなのか。
固定費が重くなっているのか。
外注費の支払い条件が資金を圧迫しているのか。
借入後の返済を含めて、資金は何か月持つのか。

この整理をしないまま借りると、次の判断がまた不安に引っ張られます。

匿名モデルケース:黒字のはずなのに資金が増えなかったWeb制作会社

年商4,000万円〜5,000万円台のWeb制作会社のモデルケースです。

売上は安定していました。既存顧客からの紹介もあり、案件数も大きく減ってはいませんでした。

ただ、月末の口座残高を見ると、いつも資金に余裕がありません。

代表は、融資を受けるべきか迷っていました。
税理士からの月次資料では、大きな赤字ではありません。

けれど、実際の手元資金は増えていませんでした。

数字を整理すると、いくつかの要因が重なっていました。

まず、入金サイトはおおむね60日でした。
売上が立っても、現金になるのは2か月後です。

次に、外注費の支払いが先行していました。
デザイン、コーディング、開発補助を外部に依頼しており、元請からの入金より先に支払いが発生していました。

さらに、人件費は毎月固定で出ていました。
案件が少し落ち着いた月でも、支払いは止まりません。

この会社では、融資を受けるかどうかを先に決めるのではなく、まず3か月先までの入金予定と支払い予定を並べました。

そのうえで、固定費カバー月数を確認しました。

すると、資金不足の原因は、単純な売上不足ではありませんでした。
入金までの60日と、外注費の先払い、固定人件費の重なりが、手元資金を薄くしていたのです。

この整理によって、借入を検討する前に、案件ごとの入金条件、外注費の支払時期、最低限必要な資金余力を確認する流れになりました。

融資を受けるかどうかは、その後の判断です。
先に行ったのは、資金構造の見える化でした。

※本事例は実際の相談内容をもとに再構成したモデルケースです。

守秘義務の観点から一部表現を調整していますが、判断の構造自体は実務に基づいています。

業種によって資金構造は変わる

同じIT受託会社でも、資金の重さは業種によって変わります。

Web制作会社では、デザインやコーディングの外注費が先に出やすい傾向があります。検収が遅れると、請求も入金も後ろにずれます。

受託開発会社では、開発期間が長くなりやすく、途中入金がない案件では数か月分の人件費を先に負担することがあります。

保守運用が多い会社では、毎月の入金は読みやすい一方で、人件費が固定化しやすくなります。

そのため、「年商がいくらなら安心」とは言えません。

見るべきなのは、売上規模ではなく、入金と支払いのズレです。

まとめ

売上はあるのに資金が残らないIT受託会社では、売上や利益だけを見ても判断しきれません。

入金サイトが60日ある。
外注費が先に出る。
人件費が固定で出る。
借入返済がある。
案件が増えるほど、一時的に資金が必要になる。

こうした構造を見ないまま融資を考えると、借りた後の返済判断が重くなることがあります。

借入を検討する前に、自社の資金構造を一度整理しておく選択肢があります。

行政書士事務所ACTIONでは、IT受託会社向けに、現在の資金状況と融資準備の前提を確認する「資金戦略診断」を行っています。

資金戦略は、一般論で決められるものではありません。
同じIT受託会社でも、入金サイトや固定費構造によって最適解は変わります。
重要なのは、「借りられるか」ではなく「今、借りるべきか」を判断できる状態をつくることです。
まずは自社の数字を整理することから始めてみてください。

借入を検討する前に、自社の入金サイト、外注費、人件費、固定費カバー月数を整理したい場合は、以下のページで支援内容を確認できます。

👉https://office-action.com/service/group/service00/

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