全国対応|支援事例集

IT受託会社支援を中心に、 関連する支援も含めて、資金戦略を実務でどう組み立てているかをまとめた事例です。

[1.資金戦略・財務顧問事例]

IT受託会社の借入判断は「いくら借りるか」より先に、返済後の資金余力を見る

IT受託会社の借入判断を、入金サイト・外注費先払い・返済後の資金余力から整理した資金戦略支援事例をご紹介します。

IT受託会社専門|資金戦略を設計する行政書士・外部CFO型パートナー

相談前の状況

今回の事例は、受託開発とWeb制作を行うIT受託会社からのご相談をもとに再構成したモデルケースです。

売上は一定程度あり、既存顧客からの継続案件もありました。
一方で、案件ごとの入金時期にばらつきがあり、月末の外注費や人件費の支払い前になると、資金残高を細かく確認しなければならない状態でした。

経営者は、追加の借入を検討していました。
ただし、相談時点で明確だったのは、「融資を受けたい」というよりも、「このまま借入を増やしてよいのか判断しきれない」という迷いでした。

税理士には決算や税務の相談をしていましたが、案件別の入金サイト、外注費の支払い時期、返済額、今後の採用予定まで含めた資金判断は、社内で十分に整理されていませんでした。

表面化していた課題

表面上の課題は、運転資金の不足でした。

入金サイトはおおむね30日から60日。
大型案件では、検収後の請求となるため、実際の入金までにさらに時間がかかることもあります。

一方で、外注先への支払いは、月末締め翌月払い、または案件途中での一部前払いが発生していました。
つまり、売上は立っていても、現金が入る前に支払いが先に来る構造です。

加えて、広告費や採用関連費も先に出ていきます。
受注を増やすための投資であっても、資金繰りの上では先に現金が減ります。

この会社では、次の課題が重なっていました。

・既存借入の返済が毎月発生している
・外注費の支払いが売上入金より先に来る
・案件が増えるほど一時的に資金が心もとなくなる
・採用や広告投資を止めるべきか判断できない
・追加借入の必要額を感覚で見ていた

「借りられるかどうか」だけを見れば、資料を整えて申し込むという発想になりやすい場面です。
しかし、この状態で必要だったのは、まず資金の流れを見える形にすることでした。

実際に見えていた本質的な問題

本質的な問題は、資金不足そのものではありませんでした。

問題は、借入判断の前提となる数字が整理されていなかったことです。

売上、粗利、利益は確認されていました。
しかし、IT受託会社の資金繰りでは、それだけでは足りません。

重要なのは、いつ入金され、いつ支払い、返済後に何か月分の固定費が残るかです。

この会社では、月商だけを見ると大きな問題は見えにくい状態でした。
しかし案件別に見ると、入金が60日以上先になる案件と、外注費の支払いが先行する案件が重なっていました。

さらに、毎月の返済額を差し引いた後の資金余力を確認すると、繁忙月の直後に手元資金が急に心もとなくなる月がありました。

IT受託会社では、受注が増えたときほど資金が楽になるとは限りません。
外注費、人件費、広告費が先に出るため、成長局面ほど資金が詰まりやすくなります。

この点を見落とすと、追加借入をしても、数か月後にまた同じ不安が出てきます。
借入額の問題ではなく、借入後の返済と投資の順番が設計されていないためです。

当事務所が行った支援

当事務所では、融資申請だけを切り出すのではなく、借入判断に必要な材料を整理しました。

まず、直近の試算表、借入返済予定、主要案件の請求予定、外注費の支払い予定を確認しました。
そのうえで、今後6か月から12か月の資金繰りを月単位で見える化しました。

特に確認したのは、次の点です。

・売上入金が遅れる月の資金残高
・外注費と人件費を支払った後の残高
・既存借入の返済後に残る資金余力
・広告費や採用費を入れた場合の資金の減り方
・追加借入をした場合の返済負担

ここで重視したのは、「いくら借りられるか」ではありません。

借りた後に、月々の返済を続けながら、必要な外注費や採用費を出せるか。
次の案件の入金まで、固定費を何か月分カバーできるか。

その判断材料を整えることでした。

また、事業計画書についても、売上目標を大きく見せるのではなく、資金構造が伝わる内容に整理しました。

受注見込み、入金時期、外注費率、固定費、返済予定を分けて記載し、返済可能性と資金余力を説明できる資料に近づけました。

なお、金融機関との交渉を代理したものではありません。
当事務所が行ったのは、経営者が借入方針を判断するための資料設計と、事業計画書作成の支援です。

支援後に整理されたこと

支援後、経営者の中で整理されたのは、追加借入の可否だけではありませんでした。

まず、必要資金の考え方が変わりました。

それまでは、「足りなくなりそうだから借りる」という見方でした。
支援後は、入金サイト、外注費の先払い、返済額、固定費カバー月数から逆算して、必要額を考える形に変わりました。

たとえば、次のような問いを数字で確認できるようになりました。

・固定費の何か月分を最低ラインとして残すのか
・大型案件の入金が1か月遅れても、返済と支払いを続けられるのか
・広告費を増やすなら、何か月後の売上回収を見込むのか

また、借入後の使い道も整理されました。

単に手元資金を厚くするのではなく、外注費の先払いに備える資金、既存返済を見ながら残す資金、投資に回せる資金を分けて考える形です。

結果として、経営者は「借りるか、借りないか」ではなく、「どの条件なら借入が経営判断として成立するか」を検討できる状態になりました。

この事例から同業のIT受託会社が考えるべきこと

IT受託会社では、利益が出ていても資金繰りが苦しくなることがあります。

理由は、売上と入金が同じタイミングではないからです。
特に受託開発やWeb制作では、検収後に請求し、その後に入金される流れが少なくありません。

一方で、外注費、人件費、広告費は先に出ます。
受注が増えるほど、先に必要な資金も増えることがあります。

そのため、借入判断では次の視点が欠かせません。

・入金サイトは30日か、60日か、それ以上か
・外注費は売上入金より前に出ていないか
・毎月返済後に固定費何か月分が残るか
・売上が増えたときに、先行支払いも増えていないか
・採用や広告投資をしても資金余力が残るか

特に見落とされやすいのは、返済後の資金余力です。

借入直後は手元資金が増えます。
しかし、返済は毎月続きます。

その返済を差し引いた後に、固定費を何か月分持てるのか。
この数字を見ないまま借入を増やすと、数か月後に資金繰りが再び苦しくなることがあります。

当事務所の見解

当事務所では、資金調達を単独の手続として扱うのではなく、借入後の資金構造まで含めて整理することを重視しています。

IT受託会社の場合、資金繰りの難しさは、売上不足だけで起こるわけではありません。
入金サイト、外注費の支払い時期、固定費、人月モデル、稼働率の変動が重なることで起こります。

だからこそ、資金戦略では「いくら借りられるか」よりも先に、「返済しながら事業を続けられる形になっているか」を確認する必要があります。

借入は、経営を前に進めるための選択肢になり得ます。
一方で、返済負担が重くなれば、採用や広告、外注体制の判断を狭めることもあります。

大切なのは、不安を理由に借入額を増やすことではありません。
また、手元資金が減ってから慌てて動くことでもありません。

自社の入金と支払いの流れを見たうえで、今借りるべきか、いくらまでなら返済に耐えられるか、借入後にどの投資を優先するかを整理することです。

当事務所への相談をご検討中の方へ

当事務所では、IT受託会社の借入、返済、資金繰り、投資判断を一体で整理する支援を行っています。

ご支援させていただくのは、自社の資金構造を見直し、借入後の返済や次の投資判断まで含めて整理したい経営者です。

初回面談では、現在の資金状況、借入の目的、入金サイト、固定費、今後の投資予定を確認します。
そのうえで、当事務所の支援が適しているかを判断します。

なお、相場確認、制度情報の収集、単発の書類チェックのみをご希望の場合、当事務所としては十分な価値を提供できない場合があります。

一方で、次のような状況にあるIT受託会社では、融資申請の前に整理すべき論点があります。

・追加借入をするべきか、返済負担を抑えるべきか判断できない
・返済が続く中で、採用や広告費に資金を使う判断が難しい
・売上はあるのに、月末の支払い前に手元資金が心許なくなる
・外注費や人件費が先に出て、入金までの資金余力に不安がある
・借入後の返済まで見た資金計画を整えてから申請したい

資金戦略は、一般論で決められるものではありません。
同じIT受託会社でも、入金サイトや固定費構造によって最適解は変わります。
重要なのは、「借りられるか」ではなく「今、借りるべきか」を判断できる状態をつくることです。
まずは自社の数字を整理することから始めてみてください。

※本事例は実際の相談内容をもとに再構成したモデルケースです。守秘義務の観点から一部表現を調整していますが、判断の構造自体は実務に基づいています。

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