※この記事は、お客様の了解を得たうえで、守秘義務に配慮し、事実関係の一部を加工して掲載しています。
ご相談の内容
今回ご相談いただいたのは、開業後まもない飲食店の経営者です。
売上がまったく足りないわけではありませんでした。
集客も少しずつ増え、数字だけを見れば、極端に悪い状態ではありません。
それでも、月初や支払日が近づくたびに手元資金が細くなり、毎月の資金繰りに不安が出ていました。
経営者が感じていたのは、単純な赤字の不安ではありません。
売上は立っている。
日々の入金もある。
それなのに、なぜか支払いに追われる。
この状態が続くと、経営者の頭の中では、売上、利益、仕入、家賃、返済、手元残高が一つに混ざっていきます。
そして、何が原因で苦しくなっているのかが見えにくくなります。
確認したこと
まず確認したのは、「いくら足りないか」だけではありません。
資金がどのタイミングで入り、どのタイミングで出ていくのか。
どの支払いが月初に集中しているのか。
日々の売上が、何の支払いに使われているのか。
来週、再来週に資金が薄くなる地点はどこか。
こうした資金の流れを、順番に分けて確認しました。
その結果、主な問題は売上不足ではありませんでした。
問題は、支払いのタイミングと管理の単位が整理されていなかったことです。
見えてきた資金繰り悪化の原因
原因は大きく三つありました。
一つ目は、仕入代金や固定費の支払いが、特定の時期に集中していたことです。
売上は日々入ってきます。
しかし、仕入や家賃などの支払いが短い間隔で出ていくと、売上があるにもかかわらず、手元資金は残りにくくなります。
二つ目は、入ってきた現金の使い道が分けられていなかったことです。
日々の売上、家賃に充てる資金、仕入に使う資金、返済に回す資金が、同じ財布の中で混ざっていました。
そのため、本来は残しておくべき固定費分まで、日々の支払いに使われやすい状態になっていました。
三つ目は、資金繰りを月単位でしか見ていなかったことです。
月次の数字や預金残高だけでは、来週どこで資金が薄くなるかまでは見えません。
今回のように支払いの間隔が短い事業では、月単位の把握だけでは判断が遅れることがあります。
実際に行った支援
今回行った支援は、資金調達を急ぐことではありませんでした。
まず、資金の入り方と出方を分解し、どこで現金が詰まっているのかを見えるようにしました。
そのうえで、主に三つの整理を行いました。
一つ目は、仕入先への支払条件の見直しです。
毎週のように支払いが発生していたものについて、支払回数や支払時期を調整できないか確認しました。
これは、単に支払いを先延ばしするためではありません。
事業を続けていくうえで、無理のない支払周期に整えるためです。
二つ目は、固定費に充てる資金を分けて管理することです。
日々の売上がすべて混ざってしまうと、家賃やその他の固定費が「残っていたら払うもの」になりやすくなります。
そこで、固定費に充てる資金をあらかじめ分けておく運用に変えました。
三つ目は、資金繰りを週単位で確認することです。
月末や月初になってから慌てるのではなく、どの週に資金が薄くなるのかを先に確認できるようにしました。
これにより、営業を強めるタイミング、仕入量を調整するタイミング、支払条件を再確認するタイミングが見えやすくなりました。
支援後の変化
整理を進めることで、月初の支払いに対する見通しが立つようになりました。
手元資金にも改善はありましたが、それ以上に大きかったのは、経営者自身が資金の詰まり方を説明できるようになったことです。
どの支払いが重いのか。
どの時期に資金が薄くなるのか。
何を先に守るべきなのか。
追加の資金調達を考える前に、何を整えるべきなのか。
こうしたことが整理されると、経営判断は変わります。
金融機関に相談するときも、仕入先と条件を調整するときも、自社の資金の流れを説明できるかどうかで、話の進み方は変わります。
資金繰りの不安は、残高の少なさだけで生まれるものではありません。
「いつ足りなくなるのか分からない」
「なぜ毎月同じように苦しくなるのか説明できない」
この状態が、不安を大きくします。
今回の支援では、資金の流れを分解することで、その不安を判断できる形に整理していきました。
この事例で大切だったこと
売上があるのに資金が残らない場合、すぐに追加融資だけを考えるのではなく、まず資金の流れを見る必要があります。
どこで資金が抜けているのか。
どの支払いが月次の負担になっているのか。
固定費や返済に充てる資金が、日々の運転資金と混ざっていないか。
月単位ではなく、週単位で見るべき場面ではないか。
ここを整理しないまま資金を入れても、同じ詰まり方を繰り返すことがあります。
資金繰りは、単に表を作ればよいものではありません。
大切なのは、経営者が次の判断をできる状態にすることです。
今回の事例では、資金不足そのものを一時的に埋めるのではなく、資金不足を招いていた構造を整理することを重視しました。
売上はあるのに資金が残らない。
月初や支払日のたびに不安が強くなる。
追加融資を考えるべきか、支払条件を見直すべきか判断できない。
そのような場合は、まず資金の入り方と出方を分けて見ることが必要です。
当事務所では、借入・返済・支払条件・今後の資金見通しをばらばらに考えるのではなく、経営者が次の判断をしやすくなるよう、資金の流れを整理する支援を行っています。