※守秘義務に配慮し、企業や人物を特定できないよう、規模・時期・金額など一部の情報を加工・変更しています。
IT受託会社では、売上が伸びても、社長が現場から抜けられないことがあります。
開発の確認、顧客対応、見積作成、外注先への指示、請求の確認。社長が多くの業務を抱えたままでは、採用や今後の案件について考える時間を確保できません。
このような場合、すぐに人を採用すれば解決するとは限りません。
採用後の人件費に耐えられるか。外注で対応できる仕事はないか。そもそも受ける案件の条件を見直すべきではないか。
今回は、依頼者が検討・決定した採用・外注・案件の前提を、入出金・返済予定とともに資金計画資料へ反映した事例です。
相談前の状況
ご相談いただいた会社は、ITシステムの受託開発を中心に事業を行っていました。
既存顧客からの継続案件があり、受注が極端に不足していたわけではありません。
一方で、社長自身が開発現場に深く関わっていました。
顧客との打ち合わせだけでなく、見積作成、仕様の確認、進捗管理、外注先への指示、納品前の確認まで、社長が担う仕事が増えていました。
目の前の案件を進めることで一日が終わり、会社の数字や将来の体制を考える時間を取りにくい状態でした。
経営者が感じていた不安や迷い
社長は、現在の体制を変える必要性を感じていました。
ただし、どこから手をつけるべきか判断できずにいました。
正社員を採用すれば、社長の負担を減らせるかもしれません。しかし、採用すると給与や社会保険料などの固定的な支出が増えます。
外注を増やせば、案件に応じて体制を調整しやすくなります。一方で、外注費の支払いが顧客からの入金より先になることもあります。
受注を絞れば社長の時間は確保できますが、売上が減ることへの不安があります。
どの選択肢にも利点と負担があるため、一つだけを見て決めることが難しい状況でした。
数字や契約条件を整理して分かったこと
最初に確認したのは、会社全体の売上だけではありません。
次のような項目を、案件ごとに整理しました。
- 売上と外注費
- 着手から入金までの期間
- 外注費を支払う時期
- 社長が対応している業務
- 社長がその案件に使っている時間
- 追加作業が発生する条件
- 検収や請求の条件
整理すると、売上や利益がある案件でも、社長の時間を多く使っているものがありました。
反対に、売上額はそれほど大きくなくても、進行方法が決まっており、社内や外注先へ任せやすい案件もありました。
また、外注費を先に支払い、顧客からの入金が後になる案件では、利益が出ていても一時的に手元資金が減ります。
問題は、単純な売上不足だけではありませんでした。
案件の受け方、社長の関わり方、支払いと入金の時期が重なり、次の判断をする余裕が失われていたのです。
資金計画資料に反映した内容
採用、外注、案件選択、追加借入の可否は依頼者が各専門家へ相談して決定する事項です。当事務所は、依頼者が比較条件として指定した複数の前提を同じ資金計画表に反映しました。
正社員の採用を想定する場合は、依頼者が社会保険労務士等へ確認して決定した給与、社会保険料、採用費、採用時期を資金計画へ反映しました。
外注を想定する場合は、依頼者が弁護士等へ確認して決定した外注費、支払時期、契約条件を資金計画へ反映しました。成果物・責任範囲等の法的判断は当事務所では行いません。
案件については、依頼者から提供された売上、入金時期、支払予定、社長の想定関与時間などを一覧化しました。案件を受注・見送る判断は依頼者が行います。
そのうえで、依頼者が指定した各前提に基づき、今後数か月の資金推移を資料上に示しました。
- 現在の体制を続ける場合
- 正社員を採用する場合
- 外注範囲を広げる場合
- 受ける案件の条件を見直す場合
- 必要に応じて運転資金を確保する場合
融資の要否・金額は依頼者が金融機関等とも相談して決定し、当事務所は依頼者が指定した返済予定を含む資金残高を資料上に示しました。
経営者が判断できるようになったこと
作成した資料により、依頼者は採用・外注等の各前提における資金推移を確認できるようになりました。
依頼者が分類した社長の担当業務を資料に記載しました。
どの業務を社長、従業員、外注先が担当するかは、依頼者が労務・契約の専門家へ確認して決定しました。
当事務所は、依頼者が決定した外注範囲と案件条件を、資金計画上の前提として反映しました。
これにより、採用するかどうかを感覚だけで決めるのではなく、採用後の資金負担と、社長が確保できる時間を比較できるようになりました。
また、今後受ける案件についても、売上額だけではなく、次の点を確認して判断できるようになりました。
- 利益がどの程度残るか
- 入金までに何日かかるか
- 外注費がいつ発生するか
- 社長がどこまで関与する必要があるか
- 想定外の追加作業が発生しやすくないか
ここで大切なのは、特定の方法を正解と決めないことです。
会社の資金状況や受注内容によって、適した選択は変わります。判断の基準を持つことで、状況が変わっても改めて検討できるようになります。
この事例から分かる一般的なポイント
社長が現場から抜けられない問題は、人手不足だけが原因とは限りません。
案件の条件が曖昧で、社長が都度判断しなければならない場合があります。
外注先への指示方法や責任範囲が整理されておらず、最終的に社長へ仕事が戻ってくることもあります。
また、利益が少ない案件や入金の遅い案件が重なることで、採用や外注に使える資金を確保できない場合もあります。
そのため、採用だけを切り離して考えるのではなく、次の要素を一緒に確認することが大切です。
- 案件ごとの利益
- 入金と支払いの時期
- 社長が使っている時間
- 社内で任せられる業務
- 外注できる業務
- 契約や見積もりの条件
- 借入後の返済負担
社長の時間も、会社にとって限りのある経営資源です。
社長がすべての案件に深く関わり続けると、売上が増えても、会社全体の判断が遅れることがあります。
同じような状況の経営者が確認したいこと
社長が現場対応に追われている場合は、まず次の点を確認してみてください。
1つ目は、社長が毎週どの仕事に時間を使っているかです。
2つ目は、その仕事が本当に社長にしかできないかです。
3つ目は、案件ごとの利益だけでなく、入金時期、外注費、社長の関与時間を把握できているかです。
採用や外注を決める前に、この3点を整理するだけでも、どこから手をつけるべきかが見えやすくなります。
大切なのは、社長が現場から完全に離れることではありません。
どの仕事に社長が関わり、どの仕事を社内や外部へ任せるのかを、自社の資金状況に合わせて選べる状態をつくることです。
当事務所では、依頼者から提供された入金、支払、返済予定と、依頼者が決定した採用・外注・案件条件を同じ資金計画表に整理します。
当事務所は、経営者が自ら判断・決定した内容に基づき、融資申請書類・資金計画の作成と、そのための事実関係・数値の整理を支援します。
※当事務所は、採用・外注・案件選択・組織体制・経営方針の可否判断、労務・社会保険相談、契約内容の法的判断、税務・会計相談、融資判断、金融機関・従業員・外注先・取引先との交渉・代理を行いません。必要に応じて、社会保険労務士、弁護士、税理士その他の専門家へご相談ください。