全国対応|支援事例集

IT受託会社支援を中心に、 関連する支援も含めて、資金戦略を実務でどう組み立てているかをまとめた事例です。

[1.資金戦略・財務顧問事例]

IT受託会社の案件選別と資金繰り|売上になる案件と、資金を苦しくする案件を分けた支援事例

売上になる案件が、必ず会社を楽にするとは限りません。IT受託会社の案件ごとの粗利・入金時期・外注費・社長の関与時間を整理し、資金繰りを苦しくする案件を見直した支援事例です。

IT受託会社専門|資金戦略を設計する行政書士・外部CFO型パートナー

売上になる案件が、会社を苦しくすることがあります

案件が増えることは、基本的にはありがたいことです。

継続案件がある。
紹介で相談が来る。
既存顧客から追加開発を頼まれる。

IT受託会社にとって、案件があることは大切です。

ただし、ここで一つ注意したいことがあります。

売上になる案件が、必ず会社を楽にするとは限りません。

売上は立つ。
でも、外注費が先に出る。
検収が遅れる。
追加作業を請求しづらい。
社長が毎回細かく確認しなければ進まない。
利益は出ているように見えるが、手元資金が残らない。

こうした案件が増えると、会社は忙しくなります。
しかし、資金繰りはむしろ苦しくなることがあります。

今回の事例は、IT受託会社の案件を、売上額だけでなく、粗利、入金時期、外注費、社長の関与時間から整理したモデルケースです。

「忙しいのにお金が残らない」という違和感がありました

ご相談いただいた会社では、複数の受託案件が動いていました。

月商だけを見ると、一定の売上がありました。
既存顧客との関係も悪くありませんでした。

それでも社長は、次のような違和感を持っていました。

「売上はあるのに、月末になると不安になる」
「忙しいのに、お金が残っている感じがしない」
「どの案件を優先すべきか分からない」
「追加借入を考える前に、案件の受け方を見直すべきではないか」

この違和感は、とても大切です。

数字上は大きな問題がないように見えても、社長の感覚として「何か苦しい」と感じることがあります。

その感覚を、単なる不安として片づけない方がいいです。

社長の違和感の中には、経営判断の種があるからです。

売上総額ではなく、案件ごとに分けて見ました

最初に行ったのは、売上を一つのかたまりで見ないことでした。

月商いくら。
年間売上いくら。
利益率いくら。

もちろん、これらの数字も必要です。

ただ、IT受託会社の場合、それだけでは見えないものがあります。

同じ100万円の売上でも、会社に残る意味は違います。

粗利が高く、入金も早く、社長の関与が少ない案件。
粗利はあるが、外注費が先に出て、入金が遅い案件。
売上は大きいが、追加作業が多く、社長がずっと張りつく案件。

これらを同じ「売上」として見てしまうと、判断を誤ります。

そこで、案件ごとに次の内容を整理しました。

売上額。
外注費。
入金予定日。
外注費の支払日。
追加作業の発生頻度。
追加請求のしやすさ。
社長の関与時間。
担当者だけで回るかどうか。
今後も継続したい顧客かどうか。

案件を分けて見ると、売上総額だけでは見えなかった負担が見えてきました。

苦しかった理由は、売上不足ではなく案件の受け方でした

整理して見えてきたのは、売上不足そのものではありませんでした。

問題は、案件の受け方にありました。

一つ目は、外注費の支払いと入金時期のズレです。

外注先には早めに支払う必要がある。
一方で、顧客からの入金は検収後になる。
その間、会社が立て替える形になります。

二つ目は、追加作業の扱いです。

当初の見積範囲を超えていても、関係性を考えると請求しづらい。
結果として、売上は変わらないのに作業時間だけが増えていました。

三つ目は、社長の関与時間です。

利益は出ているように見える案件でも、社長が毎回細かく確認しないと進まないものがありました。

社長の時間は、試算表にはそのまま出てきません。

でも、経営上は大きなコストです。

社長がその案件に時間を取られることで、次の営業、採用判断、外注先の整備、契約条件の見直しが遅れるからです。

つまり、売上はあるのに資金繰りが苦しい理由は、案件ごとの条件と社長の時間にありました。

案件を3つに分けて整理しました

支援では、案件を大きく3つに分けました。

1つ目は、積極的に続けたい案件です。

粗利が残り、入金時期も安定していて、社長の関与が少なくても進む案件です。

こうした案件は、会社の資金繰りを支える軸になります。

2つ目は、条件を見直して続けたい案件です。

顧客との関係は大切にしたい。
ただし、入金条件、検収条件、追加作業の請求方法を見直さないと、会社の資金繰りを圧迫する案件です。

3つ目は、受け方を慎重に考える案件です。

売上は大きい。
しかし、外注費が先に出る。
社長の時間も取られる。
追加請求もしづらい。

こうした案件は、受けること自体が悪いわけではありません。

ただし、受けるなら、資金余力と社長の時間を見たうえで判断する必要があります。

追加借入の前に、案件条件を見直しました

この会社でも、追加借入は選択肢の一つでした。

外注費の支払いに備える。
入金までの期間をつなぐ。
採用前の資金余力を持つ。

こうした目的が明確であれば、借入は有効な手段になります。

ただし、資金が苦しくなる原因が案件条件にある場合、借入だけで解決しようとすると、同じ問題が繰り返されます。

一時的に手元資金は増えます。

しかし、外注費が先に出る案件、追加作業を請求できない案件、社長の時間を大きく奪う案件を同じように受け続ければ、また資金繰りは苦しくなります。

そこで、追加借入を検討する前に、案件ごとの条件を見直しました。

どの案件を増やすのか。
どの案件は条件変更をお願いするのか。
どの案件は今後慎重に受けるのか。
外注費の支払いと入金時期に耐えられるか。
返済が始まった後も資金余力が残るか。

借入の前に、まず資金を苦しくしている構造を見ることにしました。

案件を受ける前に確認する項目を決めました

最終的に、この会社では、すべての案件を同じように追いかけるのをやめました。

案件を受ける前に、確認する項目を決めました。

この案件は、誰が担当するのか。
社長がどこまで入る必要があるのか。
外注費はいつ支払うのか。
入金はいつになるのか。
追加作業が出た場合に請求できるのか。
粗利はどれくらい残るのか。
この案件は、今後の会社にとって続けたい案件なのか。

これらを確認せずに、売上額だけで受けないようにしました。

案件選別は、営業の話だけではありません。

資金繰りの話でもあります。

どの案件を受けるか。
どの案件は条件を見直すか。
どの案件は今は受けないか。

ここに線を引くことも、経営判断です。

自社でも、案件ごとにこの5つを見てください

同じような不安がある場合は、まず案件ごとに次の5つを確認してみてください。

1つ目は、粗利が残っているか。

2つ目は、入金時期がいつか。

3つ目は、外注費の支払いが先に出ていないか。

4つ目は、追加作業を請求できているか。

5つ目は、社長の関与時間が大きすぎないか。

この5つを見ると、「売上はあるのにお金が残らない理由」が少し見えやすくなります。

売上総額だけでは分かりません。

案件ごとに見て、初めて分かることがあります。

まとめ

IT受託会社の資金繰りでは、売上があることだけでは安心できません。

大切なのは、その案件が会社にどのようなお金の流れを生んでいるかです。

入金はいつか。
外注費はいつ出るか。
追加作業は請求できているか。
社長の時間をどれだけ使っているか。
返済後の資金余力に耐えられるか。

売上になる案件が、会社を苦しくすることもあります。

だからこそ、案件を一つずつ分けて見る必要があります。

行政書士事務所ACTIONでは、IT受託会社の資金繰り表を起点に、借入、返済、入金、支払い、案件選別、採用や外注の判断材料を整理しています。

追加借入を考える前に、今の案件が資金繰りを楽にしているのか、苦しくしているのかを確認したい場合は、資金戦略診断としてご相談ください。

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