※守秘義務に配慮し、企業や人物を特定できないよう、規模・時期・金額など一部の情報を加工・変更しています。
売上になる案件が、必ずしも会社へ十分な資金を残すとは限りません。
外注費の支払いが先に来る案件、検収まで時間がかかる案件、追加作業を請求しにくい案件では、売上が増えても手元資金が減ることがあります。
今回ご紹介するのは、複数の案件について、粗利、入金時期、外注費、工数、社長の関与時間等、ご依頼者から提示された事実・数値を申請・社内確認用資料へ整理したIT受託会社の事例です。
相談前の状況
相談者の会社では、複数の受託開発案件が動いていました。
月商は一定水準にあり、既存顧客からの継続案件や追加開発の相談もありました。
一方で、社長は次のような違和感を持っていました。
- 売上はあるのに、月末の預金残高が気になる
- 社内は忙しいのに、期待したほど資金が残らない
- どの案件を優先すべきか分からない
- 売上の大きい案件を断ってよいか迷う
- 追加借入の前に、案件の受け方を見直す必要があるのではないか
会社全体の売上や利益だけでは、案件別の入出金・費用の状況を確認しにくい状態でした。
経営者が感じていた不安や迷い
経営者が判断できずにいたのは、案件ごとの負担です。
同じ売上額でも、案件によって次の条件が異なります。
- 社内で必要となる工数
- 外注費
- 外注先への支払日
- 顧客からの入金日
- 検収に必要となる期間
- 追加作業の発生頻度
- 社長が関与する時間
- 他の案件へ与える影響
売上額が大きい案件ほど会社に貢献しているように見えます。
しかし、外注費の先払いが大きく、社長が長時間関与する案件では、資金と時間の両方が拘束される場合があります。
案件ごとに整理して分かったこと
最初に、売上を会社全体の一つの数字として見るのをやめ、案件ごとに分けました。
確認した項目は次のとおりです。
- 契約金額
- 粗利
- 想定工数と実際の工数
- 社内人件費
- 外注費
- 外注費の支払時期
- 納品・検収条件
- 請求日と入金日
- 追加作業の内容
- 追加請求の可否
- 社長の関与時間
- 継続受注の見込み
整理すると、会社の資金と時間を比較的多く使う案件が見えてきました。
例えば、売上は大きくても、外注費の支払いが先行し、入金まで時間がかかる案件があります。
また、見積範囲を超えた作業が発生しても追加請求しにくい案件や、社長が細かく確認しなければ進まない案件もありました。
一方、売上規模は比較的小さくても、入金条件が安定し、担当者だけで進めやすく、資金と時間を残しやすい案件もありました。
ACTIONが整理した内容
ACTIONでは、案件を評価せず、ご依頼者から提示された今後の三つの対応予定案を、同じ入出金予定表へ反映しました。
受注・採用・外注・投資・融資の可否判断、法律相談、税務相談、契約交渉、金融機関との交渉・代理は行いません。
1.現在の条件で継続を検討しやすい案件
- 粗利が確保されている
- 入金時期が明確
- 外注費の先行負担が大きすぎない
- 担当者を中心に進められる
- 追加作業の取扱いが明確
2.条件を確認・調整して継続を検討する案件
- 顧客との関係は継続したい
- 入金条件に改善の余地がある
- 検収条件が曖昧
- 追加作業の決定方法が不明確
- 外注費の支払時期と入金時期に大きな差がある
3.受け方を慎重に考える案件
- 売上に対して外注費や工数が大きい
- 入金まで長い期間がかかる
- 追加作業を請求しにくい
- 社長の関与時間が大きい
- 他の案件や営業活動へ影響する
この分類は、特定の案件を断るためのものではありません。
受ける場合に必要な資金と社内体制を確認し、会社として受ける意味があるかを経営者が考えるためのものです。
社長の関与時間も確認項目として整理
試算表には、社長の時間が費用として直接表れないことがあります。
しかし、社長が一つの案件へ長時間関与すると、次の仕事が遅れる可能性があります。
- 新規営業
- 採用
- 外注先の開拓
- 契約条件の見直し
- 他の案件の管理
- 入出金予定の確認
案件に社長の関与時間が多く必要な場合、他の業務に充てられる時間が少なくなることがあります。
そこで、案件ごとの情報整理では、売上額だけでなく、社長の関与予定時間も資料へ反映しました。
追加借入の前に案件条件を確認した
この会社でも、外注費の先払いなどに備えるため、追加借入は選択肢の一つでした。
ただし、資金が残らない原因が案件条件にある場合、借入だけで対応しても同じ状況が繰り返される可能性があります。
そのため、追加借入を検討する前に、次の点を整理しました。
- どの案件を増やしたいか
- どの案件は条件を確認・調整したいか
- どの案件は慎重に受けるか
- 外注費の先払いに必要な資金
- 入金が遅れた場合の影響
- 既存返済後に残る資金
案件の受注方針は経営者が決定し、当事務所は、決定後の予定に基づく入出金予定を資料へ整理しました。
経営者が確認できるようになったこと
整理後は、すべての案件を同じように追いかけるのではなく、受注前に確認する項目を決められるようになりました。
確認する項目は、次のようなものです。
- 誰が担当するか
- 社長がどこまで関与するか
- 外注費はいくらで、いつ支払うか
- 顧客からいつ入金されるか
- 追加作業をどのように決めるか
- 案件終了後にどの程度の資金が残るか
- 今後も継続したい取引か
- 他の案件へどのような影響があるか
ACTIONは、案件を受けるかどうかの判断、採用・外注・投資・融資の可否判断を行っていません。
経営者自身が判断するために確認できる、案件ごとの売上、入金時期、外注費、工数、関与時間等の事実・数値資料を整えました。
この事例から分かる一般的なポイント
IT受託会社が案件情報を整理する際は、少なくとも次の五つを資料へ反映します。
- 粗利がどの程度残るか
- 入金日はいつか
- 外注費の支払いが先行するか
- 追加作業を適切に請求できるか
- 社長の関与時間が大きすぎないか
売上額だけを見ていると、会社に残る資金や、社内で使う時間を見落とすことがあります。
案件を一つずつ分け、入金、支払い、工数を確認することで、「忙しいのに資金が残らない」原因を考えやすくなります。
同じような状況の経営者が確認したいこと
案件を受ける前に、次の項目を確認してみてください。
- 契約金額と粗利
- 社内工数
- 外注費と支払日
- 納品・検収条件
- 請求日と入金日
- 追加作業の取扱い
- 社長の関与時間
- 他案件への影響
- 継続したい顧客・事業との関係
- 入金までに必要となる運転資金
案件ごとの事実・数値を申請・社内確認用資料へ整理したい場合は、① IT受託会社向け 案件・契約資料整理支援をご確認ください。特定の案件の利益、受注結果、融資の実行などを保証するものではありません。