行政書士
佐野 雅彦
行政書士事務所ACTION代表。
IT受託会社の借入・返済・追加融資・資金繰りを一体で見ながら、
その場しのぎではない資金の整え方を支援しています。
地方公務員として25年間、制度運用と相談対応に携わった経験を踏まえ、
現在は、返済を続けながら次の借入や投資を進められるかという視点で、記事監修と実務支援を行っています。
このページでは、IT受託会社の経営者に向けて、借入・返済・追加融資・投資判断まで見据えた資金戦略の実務情報を掲載しています。
[3.創業融資関連アーカイブ]
創業時の資金戦略を、融資条件ではなく「何か月分の余力を持つか」で考える記事です。固定費、入金サイト、運転資金の判断軸を整理します。
目次
創業前の相談で、よく論点が先にずれてしまう場面があります。
それは、「自分は借りられるのか」「自己資金はいくらあればよいのか」という問いから始まるときです。
もちろん資金調達の可否は無関係ではありません。
ただ、資金戦略の順序としては、その前に考えるべきことがあります。
本来先に置くべき問いは、創業後の何か月をどの程度の余力で持ちこたえる設計にするか、です。
日本政策金融公庫には、新たに事業を始める方や事業開始後おおむね7年以内の方を対象とした「新規開業・スタートアップ支援資金」があり、国民生活事業の案内では融資限度額7,200万円、うち運転資金4,800万円、運転資金の返済期間10年以内と整理されています。
制度の枠は存在します。
ですが、上限があることと、自社にその額が適切かどうかとは別問題です。
ここを取り違えると、「借りられるだけ借りる」か、「返済が怖いので必要額より少なく借りる」かの両極に振れやすい。
実務では、後者の方がむしろ危ういことがあります。
創業時の資金不足は、赤字そのものより、立ち上がり期間を走り切る前に意思決定の自由を失う点にあります。
見落とされやすい盲点は、創業時に必要なのは「開業費用」だけではない、という点です。
店舗取得費、内装、設備、広告初期費用は見積もりに乗せやすい。
一方で、創業後に発生する家賃、人件費、外注費、リース料、社会保険料、そして売上計上から入金までの時間差は、楽観的に置かれやすい。
経済産業省のローカルベンチマークでは、営業運転資本回転期間を
(売上債権+棚卸資産−買入債務)/月商
で把握し、回収や支払等の取引条件の変化による必要運転資金の増減を確認する指標としています。
要するに、売上が立っていても、回収前に仕入や経費の支払いが先行すれば、その差額は資金で埋めるしかないということです。
しかも2025年版中小企業白書は、業績やキャッシュフローを適時・適切に確認できる管理に取り組む事業者ほど、経常利益の変化率が高い傾向を示しています。
資金繰りは「数字に弱い会社が困る論点」ではなく、成長局面の企業ほど管理精度が問われる論点だと見た方がよいでしょう。
加えて、同白書では2024年第4四半期の借入金利水準判断DIが2007年以来の水準とされ、借入コストを以前の延長で考えにくい環境もうかがえます。
創業時の借入額を考えるとき、最低限そろえたいのは次の3つです。
家賃、人件費、役員報酬、通信費、リース料、返済予定額など、売上が想定を下回っても出ていく金額です。
ここで重要なのは、節約可能な経費ではなく、止めにくい支出で把握することです。
営業開始から、月次資金収支が安定するまで何か月見るのか。
3か月で立ち上がる業種もあれば、6か月以上を要する業種もあります。経験がある分野だから短い、とは限りません。顧客獲得の速度と入金タイミングは別だからです。
売掛金、在庫、買掛金の差から、何か月分の運転資金が寝る構造かを見る数字です。
BtoB取引、請求後入金、在庫保有があるなら、この項目を飛ばして借入額を決めるのは危険です。
一般論として万能な正解はありませんが、判断の置き方はあります。
まず、現預金で固定費の何か月分を持てるかを見ることです。
現金商売に近く、在庫も小さく、固定費も軽い業態なら、創業後の安全域を2〜3か月で設計する考え方はあり得ます。
一方、BtoBで入金が1〜2か月後、あるいは在庫を先に持つ業態なら、固定費3〜6か月分に加え、営業運転資本回転期間に相当する資金を別枠で見る方が自然です。
たとえば固定費が月150万円、立ち上がり安定まで4か月、さらに売掛・在庫要因で月商1.5か月分の運転資金が必要なら、「設備資金がいくらか」だけでなく、固定費600万円+運転資金相当額+予備費という発想で借入額を考えるべきです。
逆に、設備投資が小さくても固定費が重い会社は、少額開業だから安全とは言えません。ここが創業時に誤解されやすいところです。
業種差にも触れておく必要があります。
製造業、卸売業、建設業のように、受注から入金までに時間差があり、在庫や外注先行がある業種は、売上成長とともに必要運転資金も膨らみやすい。
反対に、小売や一部サービス業のように現金回収が早い業種は、同じ月商でも資金負担の出方が異なります。
中小企業白書でも、必要運転資金は売上債権と仕入債務の差に棚卸資産を加えた構造として説明されています。
つまり、創業融資を考えるときに「一般に自己資金はいくら必要か」と問うより、
自社の商流では、何か月分の資金が先に寝るのか
を問う方が、はるかに経営判断に近いのです。
創業時の借入は、調達できるかどうかの話に見えて、実際には創業後の選択肢をどれだけ残せるかという話です。
返済負担を恐れて借入額を抑えすぎれば、立ち上がり途中で資金繰りが詰まり、値下げ、短期視点の受注、採用見送りなど、本来避けたかった判断に押し戻されることがある。
反対に、必要額の根拠なく大きく借りれば、固定費に加えて返済が重くなり、平時の柔軟性を失います。
創業時に必要なのは、審査対策のチェックリストではありません。
固定費、立ち上がり期間、入金サイト、在庫負担を踏まえ、何か月分の余力を持つべきかを自社の構造から逆算することです。
制度はその後に選ぶものであって、先ではない。
その順序を外さないことが、創業初期の資金戦略ではとても重要です。
資金戦略は、一般論だけで決められるものではありません。
業種や固定費構造、入金条件によって最適解は変わります。
重要なのは、「借りられるか」ではなく「今、借りるべきか」を判断できる状態をつくることです。
まずは自社の前提条件を整理することから始めてみてください。
当事務所は、IT受託会社について、
借入後の返済、入金時期、人件費や外注費の支払い、採用予定などを見ながら、
借入、返済、採用、投資の判断をしやすくする支援を主に行っています。
そのため、次のような方に向いています。
・売上はあるが、手元のお金に不安がある
・借入だけでなく、返済や今後の採用までふまえて考えたい
・その場しのぎではなく、これから先の資金の流れを整理したい
・単発の答えではなく、経営判断に使える形で見直したい
一方で、次のようなご相談は対象外です。
・情報収集だけを目的としたご相談
・一度だけ答えを聞いて終わるご相談
・個人事業主の方からの一般的なご相談
・経理代行や事務処理の外注先を探しているご相談
初回面談は、オンライン60分・税込11,000円です。
初回面談では、
今の状況、ご相談の目的、借入や返済の状況を確認しながら、
何が今の資金負担になっているか
どの支援が合いそうか
を一緒に整理します。
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