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創業時の運転資金|入出金予定と資金残高の整理方法

  • 投稿:2025年02月24日
  • 更新:2026年08月14日
創業時の運転資金|入出金予定と資金残高の整理方法

創業時の資金繰り表に、売上代金の入金予定、仕入・固定費等の支払予定、月末の資金残高などを記録する一般的な方法を紹介します。当事務所は必要運転資金、持続月数、資金余力、返済能力等の計算・分析や借入判断を行わず、ご本人または関係専門家が確認した数値を書類へ整理します。

創業相談の場では、今でも「この計画書なら通るか」「自己資金が少ないが借りられるか」という問いが少なくありません。

もちろん、資金調達の可否は重要です。

ですが、経営判断として先に置くべき論点は別にあります。
本当に問うべきなのは、その事業は、どのくらいの資金余力を持って始めるべきかという点です。

ここを取り違えると、計画書は整っていても、開業後の資金繰りで苦しくなります。

創業時に見落とされやすい盲点は、必要資金を「開業に必要なお金」で止めてしまい、開業後に売上が計画どおり立ち上がらない期間をどう耐えるかまで設計していないことです。
日本政策金融公庫の2024年度新規開業実態調査では、開業費用の平均値は985万円、中央値は580万円です。

一方で、調査時点の予想月商達成率は59.6%にとどまっており、開業時に苦労したこととして「資金繰り・資金調達」が59.2%で最も高くなっています。

開業時点の必要額を埋めるだけでは足りず、売上の立ち上がりの遅れまで含めて資金設計を考える必要があることが示唆されます。

設備資金と運転資金を分けて見る

創業期の資金戦略でまず分けて考えるべきなのは、設備資金と運転資金です。
設備資金は、店舗、内装、機械、車両、システムなど、事業開始前後にまとまって出る資金です。これに対して運転資金は、家賃、人件費、外注費、仕入、広告費、返済、社会保険料など、事業が動き始めてから継続して出ていく資金を指します。

実務上、問題になりやすいのは後者です。

設備は一度見積もれば把握しやすい。

ところが運転資金は、売上が読みにくい段階ほど過小評価されやすい。
日本政策金融公庫の同調査では、開業時の資金調達額は平均1,197万円で、そのうち「金融機関等からの借り入れ」が平均780万円、「自己資金」が平均293万円と、両者で89.6%を占めています。つまり、多くの創業者は借入と自己資金を組み合わせて始めていますが、その資金の配分が設備寄りになりすぎると、創業後の資金繰りに余白が残りにくくなります。

融資限度額と借入希望額を分けて記載する

日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は、2026年3月時点でも、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方を対象に、設備資金・運転資金の両方に対応しています。

融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金20年以内、運転資金10年以内です。制度として借入余地があること自体は事実ですが、ここで限度額から逆算して必要額を考えるのは順序が逆です。

資金戦略で先に整理すべきなのは、
「売上が計画比で7割に届かない期間が何カ月あり得るか」
「その間、固定費はいくら流出するか」
「入金は現金商売か、請求後1〜2カ月後か」
という前提です。

創業時の借入を小さく抑えたい気持ちは理解できます。

ただ、借入額を小さく見せることが健全なのではありません。

不足するたびに後追いで資金を探す構造の方が、経営の自由度を落とします。

いったん創業してからの追加調達は、時間の使い方も含めて負担が重くなりやすいからです。

固定的支出と月末資金残高を月別に記載する

創業時の資金繰り表では、まず月次の固定的支出を把握します。
ここでいう固定的支出は、家賃、人件費、役員報酬の最低額、外注の固定契約分、リース料、通信費、保険料、返済予定額など、売上が伸びなくても出ていく資金を指します。

そのうえで、業態ごとの入出金の特徴を次のように整理します。

現金回収が早く、固定費が比較的少ない業態

現金回収の時期、在庫の有無、固定費、人数、前受金や月額課金の入金日を月別に記載します。

売上の立ち上がりや支出が先行する業態

売上計上・入金の開始時期、広告費、採用費、仕入などの先行支出を月次資金繰り表へ反映します。

入金までの期間や設備負担が大きい業態

BtoB取引の入金サイト、工事・制作・受託の検収時期、設備支出および粗利の前提を月別に記載します。

必要な運転資金の月数や金額を一律に示すものではありません。

借入希望額の根拠資料では、支出時期と入金時期の差を月次資金繰り表に反映します

売上計画よりも、未達時の耐性を見る

創業計画では、どうしても売上見込みに意識が向きます。

ですが、資金戦略上より重要なのは、売上計画が未達だったときにどれだけ耐えられるかです。
前掲の調査でも、調査時点の採算状況は「黒字基調」67.3%、「赤字基調」32.7%でした。

黒字企業が多数でも、裏を返せば約3割は赤字基調です。

しかも、予想月商達成率は59.6%ですから、創業初期に計画未達が起きること自体は、例外というより織り込むべき前提だと考えた方がよいでしょう。

資料では、売上額や入金時期について複数の前提を入力し、それぞれの返済後の月末資金残高を比較できるようにします。特定の売上減少率や無売上期間を判断基準として推奨するものではありません。

業種が違えば、必要な余力も変わる

この論点は、業種をまたいで一般論化しすぎると危うくなります。
たとえば、現金回収が早い小売・サービスと、請求後入金まで時間がかかる法人向け受託では、必要な運転資金は大きく異なります。

在庫を持つ業種と、ほぼ在庫を持たない業種でも違います。

人件費比率が高い業種は、売上が立つまでの固定費耐性がより重要です。
2025年版中小企業白書・小規模企業白書でも、物価高、人手不足、金利上昇、生産・投資コストの増加といった経営環境の厳しさが示されています。

こうした環境変化についても、申請資料の前提に含めるかを確認します。

まとめ

創業計画書には、支出時期、入金時期、月次収支および月末資金残高を記載します。融資の可否、借入額および条件は、公庫・金融機関が審査により決定します。

制度上の限度額と、申請書に記載する借入希望額は別の項目です。創業前には、設備資金と運転資金を分けて資金使途明細に記載します。

固定費、入金条件、在庫負担、売上計上時期を月次資金繰り表の前提として整理します。

資金戦略は、一般論だけで決められるものではありません。
業種や固定費構造、入金条件によって資料に反映すべき前提は変わります。
重要なのは、資金使途、必要時期、入出金予定および返済見通しを資料で確認できる状態にすることです。
まずは自社の前提条件を整理することから始めてみてください。

【本記事と当事務所の業務範囲】
本記事は創業時の運転資金について、創業計画書・資金繰り表に記載する一般的な項目を説明するものであり、特定の月数、売上減少率または無売上期間を個別企業の判断基準として推奨したり、借入の適否・借入額・融資制度・金融商品を選定したりするものではありません。当事務所は行政書士として、融資申請に用いる創業計画書・事業計画書・資金使途明細・資金繰り表等の作成・整理を支援します。融資の可否・借入額・条件の判断、融資のあっせん、公庫・金融機関との交渉代理、投資助言、税務判断・税務申告、社会保険・労働保険手続、登記、契約・紛争に関する法律判断は行いません。融資条件は公庫・金融機関、税務は税理士、労務・社会保険は社会保険労務士、登記は司法書士、法律・交渉は弁護士など、各業務を担当できる窓口・専門家へご相談ください。

参照した公的機関情報の一覧

  1. 公表元:株式会社日本政策金融公庫 総合研究所
    URLhttps://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kaigyo_241127_1.pdf
  2. 公表元:株式会社日本政策金融公庫
    URLhttps://www.jfc.go.jp/n/finance/search/01_sinkikaigyou_m.html
  3. 公表元:中小企業庁
    URLhttps://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2025/PDF/chusho/00Hakusyo_zentai.pdf
  4. 公表元:中小企業庁
    URLhttps://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2025/shokibo/b2_1_1.html
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