はじめに
創業融資の申請書類を作成する際は、自己資金、開業費用、希望額、売上見込み、入出金・返済予定などの基礎情報と根拠資料をそろえる必要があります。
本件では、依頼者が決定した物件取得費、内装費、設備費、運転資金の内容と、依頼者および関係専門家から提供された売上見込み・入出金予定を申請書類へ整理しました。
今回は、飲食店開業を目指したご相談者の支援事例をもとに、その整理の過程を紹介します。
なお、実際の相談内容には守秘義務がありますので、個人や店舗が特定される情報は伏せ、内容は一部抽象化しています。
自己資金・開業費用・希望融資額を申請書類へ整理
ご相談に来られたAさんは、飲食業で10年以上の経験を持つ30代の方でした。
現場経験は十分にあり、メニュー開発の力もある。仕入れ先との関係もすでにできている。
事業そのものに現実味はありました。
一方で、退職後の生活費や開業準備で手元資金が減り、金融機関への相談でも手応えを持てず、「やはり自己資金が少ないと無理なのではないか」と考え込んでおられました。
日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」について、公開されている制度案内の対象者、資金使途、返済期間などを確認し、利用する制度は依頼者が選択しました。融資の可否や審査結果は金融機関が判断します。
依頼者から提供された開業後の売上・支払見込みと返済予定を、月別の入出金・返済予定表へ転記しました。
この事例で申請書類へ整理した事実・数値
たとえば、飲食店の開業でよくあるのは、次のようなケースです。
物件取得と内装でまとまった支出が先に発生し、開業後も家賃・人件費・光熱費はすぐに始まる。
しかし売上は初月から計画通りには立たず、想定より客数が伸びない。
その結果、「開業はできたが、3か月後の運転資金が苦しい」という状態になる。
これは特別な失敗ではありません。
むしろ、創業時に最も起きやすい資金の詰まり方です。
申請書類と説明資料へ整理した主な項目は、
- 毎月いくら固定費が出ていくのか
- 売上が計画比で下振れしたときに、何か月持ちこたえられるのか
- 開業後に追加資金が必要になる前提になっていないか
という点です。
Aさんのケースでも、最初は「いくら借りられるか」という発想が先にありました。
しかし実際に整理していくと、重要だったのは借入額そのものではなく、開業後の数か月をどう安全に乗り切る設計にするかでした。
創業計画書へ、ご依頼者が提示した事業予定と数値根拠を記載
そこでまず取り組んだのが、創業計画の数字の整理です。
創業計画書には、依頼者が決定した店舗の特徴、提供商品、対象顧客、売上見込みなどを具体的に記載しました。
Aさんの場合は、次の順序で整理しました。
依頼者が設定した昼・夜の客単価、曜日別・時間帯別の来店見込み、家賃、人件費、光熱費、仕入れなどを項目別に整理し、月次の入出金・返済予定表へ転記しました。各数値の設定や評価は依頼者が行いました。
この作業をすると、計画の弱い部分がかなり明確になります。
たとえば、客単価は妥当でも来店数の見込みが強すぎる、あるいは人員配置に対して売上計画が追いついていない、といったズレです。
売上見込み、費用、希望額などの各記載について、依頼者から提供された見積書、契約書、計算資料その他の根拠資料との対応関係を確認しました。
面談資料で、説明する事実・数値と申請書類の整合性を確認
面談時に依頼者自身が提出書類の記載事項を確認できるよう、説明する事実・数値と根拠資料を一覧にしました。
当事務所は、申請書類と説明資料の記載が一致するよう整理します。面談での回答内容は依頼者が判断し、代理回答や金融機関との交渉は行いません。
Aさんにも、たとえば次のような論点を一つずつ確認しました。
- なぜその立地なのか
- 競合と比べて、誰にどう選ばれる想定なのか
- 仕入れや人材確保はどの程度見えているのか
- 開業後、売上が想定を下回ったときにどこを調整するのか
これらの項目について、依頼者が提供した事実・数値と対応する根拠資料を一覧化しました。
審査基準や評価について当事務所が判断・助言することはありません。公開された申請様式と依頼者の提供資料に基づき、必要事項を記載しました。
申請後の経過(個別事例)
申請後、Aさんは融資を受けることができました。これは個別事例の結果であり、融資の実行や金額を当事務所が保証するものではありません。
計画の段階で数字を整理していたため、開業後に「思ったより資金が減る」「何にいくらかかっているのかわからない」といった混乱が起きにくかったのです。
結果として、売上の見方、固定費の重さ、資金残高の意味を把握しながら運営できる状態ができました。
当事務所は、依頼者が決定した開業計画と提供資料に基づき、創業融資申請書類と説明資料への転記・整理を支援します。
まとめ
制度の対象要件や必要資料は申請先の公開情報で確認し、申請の可否や制度の選択は依頼者が金融機関等へ相談のうえ決定します。
自己資金が少ないことだけを気にして立ち止まる前に、
まず確認すべきなのは、事業計画が数字で説明できる状態になっているかどうかです。
とくに飲食店のように、開業時の初期投資が重く、開業後もしばらく固定費負担が続く業態では、
「借りられるか」より先に、「どの前提なら安全に始められるか」を見ておく必要があります。
なお、実際の支援では、相談内容や財務情報、事業計画の詳細を守秘義務のもとで取り扱っています。
公開している事例は、個別事情が特定されないよう情報を加工しています。
本件では、依頼者が提供した事実と数値を、申請書類、入出金・返済予定表、説明資料へ項目別に整理しました。
本事例は個別の経過を紹介するもので、融資の実行・金額・審査結果や開業後の収支を保証するものではありません。当事務所は、融資の可否判断、融資額・金融機関・制度の選択、事業・投資判断、税務・会計相談、金融機関との交渉・代理を行いません。