※本記事は、お客様の了承を得たうえで、守秘義務に十分配慮し、実際の相談内容を一部加工・匿名化して掲載しています。
業種や金額、時期などは、個別の企業が特定されないよう調整しています。
はじめに
売上が立っているのに、なぜか手元資金が減っていく。
この相談は、飲食業に限らず、多くの中小企業で見られます。
特にテイクアウト店のように、日々売上が動く事業では、経営者の感覚としては「忙しい」「客数もある」「売れていないわけではない」という認識になりやすいものです。
ところが、口座残高はそれとは別の動きをします。売上の有無と、資金が残るかどうかは、同じ話ではありません。
実際にご相談いただいたあるテイクアウト店でも、まさにその状態が起きていました。
毎日の販売と一定の売上はある一方、月末の支払いに備えて日々の入出金と返済予定を一覧で確認したいとのご相談でした。
こうした局面で、経営者が最初に考えがちなのは「追加で借りられるかどうか」です。
たしかに資金調達が必要な場面はあります。
借入や返済条件の変更を検討するにあたり、依頼者が金融機関等へ相談するための基礎資料をそろえる必要がありました。
この事例では、依頼者から提供された入出金実績、支払予定、返済予定を、入出金・返済予定表と説明資料へ転記・整理しました。融資や返済条件の判断は依頼者が行いました。
まず確認すべきは、利益ではなく「資金が減るタイミング」
今回の店舗では、帳簿上は極端に悪い数字が出ていたわけではありませんでした。
にもかかわらず、資金が厳しくなっていた。原因は、売上の大小そのものよりも、入ってくる時期と出ていく時期のズレにありました。
過去数か月の入出金を整理し、週単位で資金の動きを確認すると、ある傾向が見えてきました。
月初から中旬にかけて、仕入、人件費、家賃、各種引落しが重なり、資金が一時的に大きく減っていたのです。
一方で、売上は日々入ってくるものの、その支払い集中を吸収するほどの余力はありませんでした。
経営者から見ると、「毎日売っているのに苦しい」という感覚になります。ですが実務的には、「売上がある」のではなく、「支払いの山を越えるだけの手元資金がない」という構造の問題です。ここを見誤ると、必要な対策もずれてしまいます。
モデルケースで考えると分かりやすい
この種の話題は、言葉だけだと実感しにくいかもしれません。
そこで、よくあるモデルケースに置き換えてみます。
たとえば、ある店舗が月商250万円前後で営業しているとします。日々の売上は一定にあり、客足も極端には落ちていません。経営者としては「赤字の店ではない」という感覚を持ちやすい状況です。
しかし、月初に仕入代40万円、家賃20万円、人件費60万円、借入返済10万円、その他の引落し15万円が重なると、その時点で145万円の支払いが先に出ていきます。月間では売上が立っても、支払いのタイミングが集中すると、口座残高は先に細っていきます。
ここで手元資金が80万円しかなければ、月の途中で資金が詰まる可能性が高くなります。
つまり問題は「年間で利益が出るか」ではなく、「支払いの集中に耐えられるだけの資金余力があるか」です。
当事務所は、依頼者が確認しやすいよう、各数値を日付順・項目別に一覧化しました。
書類作成支援で行ったこと
1. 入出金・返済実績を月別に一覧化
最初に、依頼者から提供された過去の入出金実績をもとに一覧表を作成しました。
売上、仕入、人件費、家賃、水道光熱費、税金、借入返済などを日付順・項目別に転記しました。
一覧表には、依頼者から提供された月ごとの入金日、支払日、固定費、返済日、残高を記載しました。これにより、依頼者が各月の入出金予定を同じ資料上で確認できるようになりました。
当事務所は、依頼者が提供した事実と数値を、依頼者自身が確認するための前提資料として分かりやすく整理します。
2. 依頼者が金融機関へ相談するための説明資料を作成
現状整理の後、依頼者本人が既存借入の返済条件について取引金融機関へ相談しました。当事務所は、依頼者が決定した方針と提供された今後の入出金見込みを、説明資料へ反映しました。金融機関への説明・交渉は依頼者本人が行っています。
今回のモデルケースでは、依頼者と金融機関との協議により、一定期間、元金返済を据え置き、利息のみを支払う条件となりました。当事務所がこの結果を保証したものではなく、個別の審査・判断は金融機関が行います。
金融機関への相談に使用するため、依頼者が提供した入出金実績、返済予定、今後の売上・支払見込みを項目別にまとめました。
3. 依頼者が継続利用する入出金・返済予定表を整備
金融機関との協議後、合意した返済条件を反映した入出金・返済予定表を作成しました。
依頼者は、月次で入出金・返済予定表を更新する運用を決定しました。仕入量、人員配置、支払時期などの経営判断は依頼者が行い、当事務所は決定された前提を資料へ反映しました。
経営者の方からは、後に「数字を見るのが怖いものではなくなった」とのお話がありました。資料整理後の依頼者個人の感想であり、当事務所が経営成果を保証するものではありません。
この事例が示しているのは、「借りる前に整える」という順番
業種によって入出金の項目や時期は異なります。本件では、テイクアウト店について依頼者から提供された売上、仕入、人件費、固定費、返済予定を資料へ整理しました。
当事務所は、依頼者が指定した期間について、入金予定、支払予定、返済予定を同じ一覧表へ転記します。借入や返済条件、固定費、運転資金に関する判断・助言は行いません。
守秘義務について
なお、このような支援事例を掲載する際には、守秘義務への配慮が欠かせません。実際の相談では、売上、借入、返済状況、取引先との関係など、企業経営の中核に関わる情報を扱います。そのため、公開にあたっては、ご本人の了承を前提に、業種の表現、金額、時期、経過などを一部加工し、特定につながる情報は伏せています。
支援を受ける立場の経営者にとっては、「どこまで話してよいのか」が気になるのは自然なことです。だからこそ、相談先を選ぶ際には、手続だけでなく、こうした情報の扱い方にも目を向ける必要があります。
まとめ
入出金・返済予定を一覧化することで、依頼者は提供した数値を月別に確認できるようになりました。
本件では、入出金日、支払項目、固定費、返済予定など、依頼者が指定した項目を一覧資料へ記載しました。
資料の内容をどのように評価し、今後の方針を決めるかは、依頼者が金融機関や必要な専門家へ相談のうえ判断します。
資金調達や返済条件、仕入れ、人員配置などは、事業者が金融機関や各専門家とも相談して判断する事項です。
当事務所は、依頼者が決定した内容と提供資料に基づき、入出金・返済予定資料および融資申請書類への転記・整理を支援します。
※当事務所は、融資・返済条件・経営方針の可否判断、税務・会計相談、金融機関との交渉・代理を行いません。融資や条件変更の実行結果も保証しません。必要に応じて、税理士、弁護士その他の専門家へご相談ください。