※本記事はお客様の了承を得たうえで、守秘義務に配慮し、個人が特定されないよう一部内容を加工しています。
この事例でわかること
- 創業融資の進め方(日本政策金融公庫→保証協会付き融資の流れ)
- 事業計画の要点(売上根拠・客単価・稼働率・原価率・商圏分析)
- 資金繰り表(キャッシュフロー)設計と赤字月のコントロール
- 融資面談対策(金融機関が確認するポイントと想定問答)
- 補助金の扱い(提携専門家と連携する方針)
案件概要
- 業種/形態:ネイルサロン(美容サービス)/路面店舗
- エリア:駅徒歩圏・住宅地隣接
- 自己資金:300万円
- 調達結果:合計800万円(日本政策金融公庫+制度融資)
- 開業後:3ヶ月で黒字化、リピート率約75%
- 対応期間目安:初回相談〜実行まで約2〜3ヵ月(物件・工期により変動)
ご相談内容と課題
- 技術・指名実績は十分だが、事業計画の数値根拠が弱い
- 初期投資(内装・設備・保証金等)>自己資金で資金不足
- 資金繰り表が未作成でキャッシュフローの山と谷が不明確
- 融資面談に不安(質問意図・説明順序が曖昧)
- 補助金も気になるが、採択時期や要件・事後手続きに不安
当事務所の支援内容
1) 事業計画の見える化
- ターゲット:30〜50代・通勤/子育て層の再来店需要
- メニュー設計:単価・施術時間・オプション比率を整理
- 稼働前提:日次予約枠×稼働率×キャンセル率を設定
- 売上式(例)
- 平日:6名 × 客単価7,800円 × 平日稼働日数
- 休日:4名 × 客単価7,800円 × 休日稼働日数
- = 月間売上 約110万円(保守・標準・積極の3シナリオで提示)
2) 商圏分析/売上根拠/原価率
- 立地評価:駅徒歩7分、住宅地隣接、個室サロンの競合が少ない
- 集客動線:Instagramハッシュタグ(#地名+ネイル)、公式サイト、口コミ
- 原価率:ジェル・ツール等の消耗品を施術別に積み上げて提示
- 実績反映:過去の指名数・予約傾向から初期稼働率を保守的に設定
金融機関に対し、「なぜこの数値か」を地図と数表で説明可能な状態に整備。
3) 資金繰り表(キャッシュフロー 略してCF)設計
- 初期費用:内装・設備・広告・保証金を総額把握(見積整合)
- 固定費:家賃/光熱費/通信/広告/人件費(将来採用を含む)
- 返済計画:元利の月額をCFに反映し、赤字月〜損益分岐超過月を可視化
- 運転資金:仕入は前払い、売上は現金中心というタイムラグをCFに反映
- 耐性テスト:稼働率マイナス10%でも資金ショートしない安全域を確認
費用・CFの見える化(例)
| 区分 | 主な項目 | 月額/初期目安 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 内装・設備・保証金・広告初期 | 数百万円規模 |
| 固定費 | 家賃・光熱・通信・広告・雑費 | XX〜XX万円/月 |
| 返済 | 元利合計(公庫+制度融資) | XX万円/月 |
| 目標売上 | 平日+休日の積上げ | 約110万円/月 |
| 損益分岐 | 変動費・固定費・返済を反映 | 月XX万円目安 |
※実数は個別見積に基づき作成。
4) 融資戦略(公庫→制度融資)
- フェーズ1:日本政策金融公庫(創業融資)で初動スピードを確保
- フェーズ2:保証協会付き融資で内装費+運転資金を補完
- 借入構成:返済比率を一本化し、返済可能性を明確化
- 留意点:「自己資金要件」は固定ではなく、事業妥当性とCFが評価軸
5) 面談対策(想定問答と資料順序)
よく確認される論点
- 客単価の根拠/施術時間と回転率
- 集客計画(SNS・クチコミ・予約導線)
- 指名実績・離職理由・独立の必然性
- 設備・内装費の妥当性と見積整合性
- 想定外時の運転資金確保策(広告調整、固定費見直し 等)
準備資料の順序:事業計画 → 商圏 → 売上根拠 → CF → 見積 → スケジュール
模擬面談:2回実施(質問意図→回答要旨→補強資料)で応答精度を改善
6) 補助金の取り扱い
- 立上げは融資を先行し機動力を確保、必要に応じて提携の専門家を紹介
- 採択時期・要件・事後手続が複雑なため、本業への負荷最小化を優先
結果
- 創業融資 合計800万円を調達(公庫+制度融資)
- 開業3ヶ月で黒字化、リピート率約75%
- 資金繰りの見通しが明確になり、施術と運営に集中可能に
お客様コメント(抜粋)
「数字の不安がなくなり、面談でも落ち着いて話せました。施術に集中できています。」
実務上のポイント
- 数字の根拠=信頼:稼働率・客単価・施術時間で説明可能に
- CF重視の計画:返済・固定費・広告費を月次で並べ、赤字月を前提に設計
- スキーム設計:公庫→保証協会付きの段階構成でスピードと総額を両立
- 面談対策:回答の順序と資料の整合性が通過率を左右
- 補助金はあとから:必要時に提携専門家と確実に
当事務所の支援スタンス
当事務所は、事業計画(ロジック)×CF(数字)×実行設計を一体で支援します。
「自己資金の多寡」よりも事業の妥当性・継続可能性を重視し、金融機関・お客様双方に対して説明可能な計画に整えます。
むすびに
- 数字が苦手でも問題ありません。根拠にできる数字へ一緒に整えます。
- 開業時の不安はよくあることです。物件・内装・資金・集客を順に解像度アップさせましょう。
- 補助金は無理に抱え込まないでOK。提携専門家と適切に設計します。
ご相談・お問い合わせ
ネイルサロンをはじめ、美容サービスの創業融資・資金繰りのご相談をお受けしています。
現在のご状況(物件・自己資金・見積・開業時期など)をわかる範囲でお知らせください。初回はヒアリング中心で、進め方の選択肢を一緒に整理します。