IT受託会社専門|資金戦略を設計する行政書士・外部CFO型パートナー
はじめに
IT受託会社にとって、同業の買収や事業譲受は、「自社だけで成長するより時間を買う」ための非常に魅力的な選択肢です。
しかし、売上高や開発実績といった表面的な数字だけで判断し、「買収後に資金繰りが苦しくなる」という罠に陥るケースは少なくありません。
今回は、事業拡大のためにM&Aを検討していたIT受託会社の社長に対し、「買えるか」ではなく「買った後に無理なく回るか」を軸に伴走した支援事例をご紹介します。
1. 相談の背景:成長への「期待」と、拭いきれない「違和感」
相談に来られたのは、創業から数年が経ち、次の一手として事業譲受を検討していた社長でした。
「既存顧客を引き継げる」「売上拡大のスピードが上がる」といったメリットがある一方で、社長の頭の中には「買収資金の返済を背負って大丈夫か」「引き継ぐ案件の保守対応が重荷にならないか」という、無視できない不安がありました。
創業融資やM&Aは、契約して終わりではありません。
「その後も会社が無理なく続くかどうか」こそが、経営における真の重要課題です。
2. IT受託特有の「死の谷」:支払いは先、入金は後
IT受託というビジネスには、「支払いが先、入金が後」になりやすい特有の資金構造があります。
- 先行するコスト: 外注エンジニアへの支払いや社員の給与は、毎月発生します。
- 後から入る売上: 顧客からの入金は、納品・検収・請求を経て数か月後になることが一般的です。
M&Aで案件を引き継ぐ際、「入金サイトが長い」「検収条件が曖昧」といった不利な条件まで一緒に引き継いでしまうと、売上が増えるほどに手元のキャッシュが枯渇するリスクが高まります。ここに買収資金の返済が加わると、資金繰りへの圧力はさらに強固なものとなります。
3. 実施した支援:36か月の「資金ポートフォリオ」設計
当事務所が行ったのは、買収価格の妥当性チェックだけではありません。
買収後12〜36か月を見据えた「資金構造の可視化」です。
- 時間軸による整理: 既存事業と引き継ぐ案件の入金時期、外注費の支払時期、採用による固定費増、融資の返済額をすべて一本の線に並べました。
- 見えない工数のあぶり出し: 売上として見えにくい「過去案件の保守対応」や「PM・社長自身の管理工数」が、どれほど現場の時間を奪うかを数値化しました。
これにより、「買収直後の資金が薄くなる時期」や、「採用を数か月ずらすべきタイミング」が明確になりました。
4. 支援の結果:「勢い」が「確信」ある判断に変わった
支援を通じて、社長は買収を単なる「勢い」で決めるのではなく、具体的な数字に基づいた判断を下せるようになりました。
- 具体的な検討材料の獲得: 「返済原資は足りるか」「外注費を何か月立て替える必要があるか」を把握したことで、リスクを許容できる範囲が明確になりました。
- 金融機関への説明能力向上: 買収後の資金繰りと返済計画を論理的に説明できるようになったことで、融資交渉においても強い根拠を持てるようになりました。
ACTIONが大切にしている「外部CFO」の視点
私たちは、単なる「資金調達屋」ではありません。
融資が通ることや資料を作ることだけを成果とせず、「社長が自分自身で納得して判断できる材料を整えること」を最大の役割と考えています。
IT受託会社の成長には「攻めの判断」が不可欠です。
しかし、攻める時ほど足元の資金繰りを見極める必要があります。
「買収後も、その会社が無理なく続くかどうか」
経営者の横に立ち、現場の負担や契約条件まで踏み込んで一緒に考える。
それが、当事務所の考える外部CFO型パートナーとしてのあり方です。