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[1.IT受託会社向け資金戦略]

【IT受託会社×資金戦略】3月決算前に見るべき年度末キャッシュと来期借入判断の設計

  • 投稿:2026年02月20日
  • 更新:2026年03月15日
【IT受託会社×資金戦略】3月決算前に見るべき年度末キャッシュと来期借入判断の設計

3月決算前のIT受託会社が確認すべき年度末キャッシュの見方を解説。固定費カバー月数、資金余力月数、SES型と受託開発型の違いから借入判断を整理します。

IT受託会社専門|資金戦略を設計する行政書士・外部CFO型パートナー

3月決算を前に、試算表では黒字着地が見えている。受注残もある。来期は採用も考えている。
それでも、預金残高だけを見ると妙に薄い。

ここで止まる経営者は少なくありません。

問題は、利益が出ているかどうかではありません。
3月末時点で、5月末までの支払いにどこまで耐えられるかです。

中小企業庁の会計活用資料では、掛売上は翌々月末回収、掛仕入は翌月末払い、給与は翌月払いという前提で資金繰り表を作る例が示されています。

日本政策金融公庫も、資金繰り計画策定のための「資金繰り表」を公開しています。

利益と現金がずれるのは例外ではなく、資金管理の前提です。

構造解説|なぜ3月末は黒字でも薄く見えるのか

入金サイト60日と先払いコストが重なる

IT受託会社では、検収から入金まで1〜2か月以上空く契約は珍しくありません。

3月に納品・検収した売上が、3月末にはまだ現金化していない状態で残る。
一方で、給与、外注費、家賃、社会保険料、広告費の一部は先に出ていきます。

J-Net21も、BtoB取引では売上計上と現金回収に時間差があり、その間に人件費や税金支払いで資金不足が起こりうると説明しています。

3月決算で本当に見るべきは、5月末までの着地

3月決算の法人は、法人税の確定申告書も消費税の確定申告書も、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内に提出しなければなりません。

納付もこの時期に重なります。

つまり、3月末残高は決算日時点の安心感ではなく、5月末前後の税金・固定費流出に耐えられるか、という文脈で読む必要があります。

SES型と受託開発型では、薄くなり方が違う

SES型は、稼働率が下がると翌月売上に近い速度で影響が出ます。

売上予測は立てやすく見えても、空き要員が出た瞬間に固定費の未回収部分が増えます。
受託開発型は、案件の進行や検収遅延で入金が後ろにずれやすい。

PL上では売上見込みがあっても、キャッシュ化の時点が読みにくい。
Web制作寄りの会社は、広告費や外部制作費の前払いが入る案件で、粗利ではなく資金の先出しが先に効きます。

ここを一括して「IT業」と処理すると、借入判断を誤りやすくなります。

よくある誤解|売上と融資枠だけでは判断にならない

「黒字なら借入は急がなくてよい」は半分しか合っていない

黒字でも資金不足は起こります。

J-Net21は、売上が伸びて売掛金が膨らむ局面ほど、帳簿上は黒字でも資金繰りが追いつかないことがあると整理しています。

「融資枠があるから安心」ではない

枠があることと、借入のタイミングが適切かは別です。
年度末前後の借入判断で重要なのは、審査の通りやすさより、どの月の資金ショックに備えるのかです。

借入は保険ではありますが、設計なしに持つと、返済負担だけが先に残ることがあります。

判断基準|「いくら足りないか」ではなく「何か月持つか」で見る

ここで使いたいのは、実務上の管理指標です。

業界平均でも正解でもなく、自社設計のためのものとして見てください。

1. 固定費カバー月数

現預金 ÷ 月間固定費
まずは3月末残高で計算します。
たとえば現預金1,200万円、月間固定費400万円なら3.0か月です。

ここでいう固定費は、人件費、家賃、通信費、採用関連の継続支出、返済額のうち毎月確定的に出るものを中心に見ます。

2. 資金余力月数

(現預金 − 近い将来に確定している大口流出)÷ 月間固定費
3月決算なら、5月末までの税金納付、賞与予定、前払い広告費、採用に伴う初期費用を先に差し引いて見ます。
1,200万円残っていても、5月までに400万円の大口流出が見えていれば、実質余力は2.0か月です。ここで初めて「借りるかどうか」が論点になります。

3. 稼働低下時の耐久月数

来期採用を考えるなら、稼働率が10ポイント落ちた月を2か月置く、あるいは検収が1か月後ろにずれた場合を置いて試算します。
このとき資金余力が何か月残るか。
判断基準としては、3か月を切るなら守りの設計、6か月を確保したいなら先に調達余地を検討する、という見方が実務上は置きやすいでしょう。

ただし、これは一般解ではなく、固定費の硬さと案件変動の大きさで調整が必要です。

モデルケース|借入額ではなく、耐久月数から逆算する

年商6,000万〜8,000万円規模の受託開発会社を想定します。
3月末現預金は900万〜1,100万円。月間固定費は280万〜330万円。

来期はエンジニアを1〜2名増やしたい。
この会社で見るべきなのは、「いくら借りられるか」ではありません。

まず3月末残高から、5月末までの税金納付見込みと既に決まっている採用関連支出を落とす。
そのうえで、固定費カバー月数が2か月台に落ちるなら、採用後に稼働が立ち上がるまでの空白に耐えにくい。
逆に、受注残の入金時期が明確で、検収遅延の可能性も低いなら、借入ではなく採用時期の調整で設計できることもあります。
論点は資金調達そのものではなく、どの前提を置いたときに何か月持つかです。

※本事例は実際の相談内容をもとに再構成したモデルケースです。

守秘義務の観点から一部表現を調整していますが、判断の構造自体は実務に基づいています。

業種差への言及|同じIT受託でも設計は変わる

SES型は、案件終了や待機で月次売上が落ちるため、固定費カバー月数の悪化が早い。
受託開発型は、検収・請求・入金のズレが大きく、売上の見え方よりキャッシュ化の遅れが問題になりやすい。
Web制作型は、広告費や外部パートナー費の前払いがある案件で、黒字案件でも手元資金が薄くなることがあります。

だから、年度末の借入判断は「IT業だからこうする」では足りません。
自社がどの構造で資金を失いやすいかを先に見ないと、借入は設計になりません。

まとめ

年度末に確認すべきなのは、PLの着地だけではありません。
3月末の現預金から、5月末までの税金・固定費・前払い支出を引いたとき、資金余力が何か月残るのか。
この視点がないまま借入時期だけを論じても、判断は浅くなります。

資金戦略は、一般論で決められるものではありません。
同じIT受託会社でも、入金サイトや固定費構造によって最適解は変わります。
重要なのは、「借りられるか」ではなく「今、借りるべきか」を判断できる状態をつくることです。
まずは自社の数字を整理することから始めてみてください。

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