行政書士
佐野 雅彦
行政書士事務所ACTION代表。
IT受託会社の借入・返済・追加融資・資金繰りを一体で見ながら、
その場しのぎではない資金の整え方を支援しています。
地方公務員として25年間、制度運用と相談対応に携わった経験を踏まえ、
現在は、返済を続けながら次の借入や投資を進められるかという視点で、記事監修と実務支援を行っています。
このページでは、IT受託会社の経営者に向けて、借入・返済・追加融資・投資判断まで見据えた資金戦略の実務情報を掲載しています。
[1.IT受託会社向け資金戦略]
入金サイト60日が続くIT受託会社が、運転資金を何か月分持つべきかを、固定費・営業CF・DSCR・SESと受託開発の違いから整理します。
IT受託会社専門|資金戦略を設計する行政書士・外部CFO型パートナー
「入金が2か月後でも、利益が出ていればそのうち回るはずだ」。
IT受託会社では、この見方が資金判断を鈍らせることがあります。
実際には、月末に人件費と外注費が先に出ていき、売上は計上されても現金化は翌々月になりやすい。
そこへ採用費や広告費の前払いが重なると、損益では黒字でも資金だけが薄くなる局面が生まれます。
とくにSES、受託開発、ITコンサルのいずれでも、事業の中心が「人」である以上、固定費の中心はエンジニア人件費です。
案件が増えれば安心、というほど単純ではありません。
大型案件の受注が、むしろ資金を圧迫することもあります。
問題は売上の有無ではなく、現金が戻るまでの時間差を、どれだけ自社が吸収できる構造になっているかです。
入金サイト60日が重いのは、単に回収が遅いからではありません。
IT受託会社では、支出の発生順序が早いからです。
社員給与、社会保険料、業務委託費、再委託先への支払いは、売上回収より先に動きます。
受託開発では、要件定義や設計の前工程で工数が先行しても、検収まで請求が立たないことがあります。
SESでも、「月末締め翌月請求、翌々月入金」という流れは珍しくありません。
このため、案件粗利率が出ていても、プロジェクトキャッシュフローは赤字、ということが起こります。
利益率だけで案件を見ている会社ほど、このズレに気づくのが遅れがちです。
粗利が良い案件でも、回収が遅く、外注比率が高く、立ち上がりで工数先行が大きければ、資金面ではむしろ重い案件になりえます。
ここで見るべきは、月商ではなく、営業キャッシュフローです。
金融庁は、中小企業の返済能力をみる際、実態的な財務内容、資金繰り、収益力に加え、キャッシュフローによる債務償還能力を総合的に勘案するとしています。
黒字かどうかだけではなく、事業から現金が生まれているかが見られているわけです。
IT受託会社で営業CFが崩れやすい典型は三つあります。
第一に、エンジニア人件費比率が高いまま単価改定が遅れているケース。
第二に、外注費の先払い負担が大きいケース。
第三に、採用費や広告費を先に投下したのに、稼働率の改善が追いつかないケースです。
60日サイトが続く会社では、この三つが同時に起きると、売上成長と資金悪化が並行します。
では、運転資金を何か月分持つべきか。
ここで基準にすべきなのは、月商ではなく「毎月確実に出ていく固定支出」と「先払いが避けにくい支出」です。
具体的には、エンジニア人件費、役員報酬、管理部門人件費、社会保険料、地代家賃、最低限の販管費、既存借入の返済額が土台になります。
これに、外注費のうち継続案件で実質的に固定化している部分を加えると、実務上の判断に近づきます。
資金余力(月数)は、「現預金 ÷ 月次固定支出」という計算でみる考え方が使いやすいでしょう。ただし、入金サイト60日の会社では、単純な固定費だけでは足りません。
2か月分の回収遅れを自社が吸収する必要があるため、月次固定支出に加えて、外注費先払いと採用・広告の前倒し支出がどの程度あるかを補正する必要があります。
ここで短期資金と長期資金を混ぜないことも重要です。
入金サイトのズレを埋めるための資金は短期資金として捉えるのが自然です。一方、採用強化、教育投資、内製化、人員体制の増強のように、効果が長めに回収されるものは、より長い期間で考える資金です。
日本政策金融公庫でも、運転資金と設備資金は資金使途を区分しており、一般貸付では運転資金は5年以内、設備資金は10年以内という整理が示されています。
資金の性格を分けること自体が、借入判断の前提になります。
数値の目安としては、資金余力が3か月未満なら防御力は弱い、3〜6か月なら要管理、6か月超なら一定の余力あり、と整理しやすいと思います。
ただし、これは絶対基準ではありません。
SES比率が高く稼働率が安定している会社と、受託開発比率が高く検収のぶれが大きい会社では、必要月数は同じになりにくいからです。
DSCRも確認したい指標です。
「営業CF ÷ 年間元利返済額」で見て、1.0未満なら返済原資不足の可能性、1.2前後なら慎重運転、1.5以上なら一定の返済余力あり、という見方は実務上の補助線になります。
もっとも、営業CFが一時要因で上下する会社では、単年だけで判断しない方がよいでしょう。
あわせて見たいのは、エンジニア人件費比率、稼働率、案件粗利率です。
人件費比率が高い会社は、稼働率の数ポイント低下でも資金に効きます。案件粗利率が確保されていても、回収が遅く追加工数が発生しやすければ、プロジェクトキャッシュフローは悪化します。結局、運転資金の安全圏は、利益率よりも「固定費の重さ」「回収の遅さ」「返済負担」の組み合わせで見た方がぶれません。
金融機関が見ているのも、単なる売上規模ではありません。
金融庁は、資金使途やその性格を確認しつつ、キャッシュフローを重視して判断する必要があると示しています。
つまり、「いくら必要か」より前に、「何のための資金で、いつ回収され、どう返済されるか」を説明できるかが問われます。
入金サイト60日が続く会社が評価を落としやすいのは、資金不足そのものより、説明の曖昧さです。
運転資金なのか、採用投資なのか、赤字補填なのかが混ざっていると、見え方が不安定になります。
逆に、月次の固定支出、入金サイト、営業CF、返済額を一本の線で説明できる会社は、資金需要の妥当性が伝わりやすくなります。
SESは、比較的売上の見通しを置きやすい一方、稼働率低下が即座に資金へ響きます。
待機が増えれば、人件費は固定のまま売上だけが落ちるからです。
そのため、SES比率が高い会社は、最低でも3〜6か月分の資金余力を厚めに見ておいた方が安全なことがあります。
受託開発は、案件粗利を取りやすい場面がある反面、検収遅れ、仕様変更、前工程の工数先行で、資金化のタイミングがぶれやすい。
大型案件ほど、利益より先に資金負担が立つことがあります。
このタイプでは、同じ6か月でも安心とは言い切れません。
外注比率や検収条件によっては、さらに厚い余力が必要になることもあるでしょう。
入金サイト60日の会社が持つべき運転資金は、月商の何か月分かで決めるより、固定支出と先払い支出を何か月吸収できるかで考えた方が、判断を誤りにくくなります。ひとつの答えを探すより、自社の資金構造を分解したとき、どこで現金が先に出て、どこで戻り、どこで詰まりやすいかを見極めることが先です。
資金戦略は、一般論だけで決められるものではありません。
業種や固定費構造、入金条件によって最適解は変わります。
重要なのは、「借りられるか」ではなく「今、借りるべきか」を判断できる状態をつくることです。
まずは自社の前提条件を整理することから始めてみてください。
出典
・「金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕」金融庁
https://www.fsa.go.jp/manual/manualj/manual_yokin/bessatu/y1-01.pdf
・「金融検査マニュアルに関するよくあるご質問(FAQ)」金融庁
https://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20120904-1/01.pdf
・「一般貸付」日本政策金融公庫
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/jiyusij_m.html
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