行政書士
佐野 雅彦
行政書士事務所ACTION代表。
IT受託会社の借入・返済・追加融資・資金繰りを一体で見ながら、
その場しのぎではない資金の整え方を支援しています。
地方公務員として25年間、制度運用と相談対応に携わった経験を踏まえ、
現在は、返済を続けながら次の借入や投資を進められるかという視点で、記事監修と実務支援を行っています。
このページでは、IT受託会社の経営者に向けて、借入・返済・追加融資・投資判断まで見据えた資金戦略の実務情報を掲載しています。
[1.IT受託会社向け資金戦略]
3月決算前のIT受託会社は、利益ではなく3月末着地キャッシュで判断すべきです。SES型・受託開発型の違いと、固定費カバー月数による借入判断の軸を整理します。
目次
IT受託会社専門|資金戦略を設計する行政書士・外部CFO型パートナー
3月決算を前に試算表を見ると、利益は出そうに見える。
一方で、預金残高には余裕がない。
採用を進めるか、外注を増やすか、節税目的の支出を入れるか。
判断材料が利益だけだと、この場面で手が止まります。
IT受託会社の決算前に本当に見るべきものは、今期の損益計算書(P/L)ではありません。
3月末に、自由に使える現金がどれだけ残るかです。
とくにSES、受託開発、Web制作のように、売上計上と入金、原価支出のタイミングがずれる業態では、黒字と資金余力は一致しません。
IT受託会社では、売上が立ってから入金まで30日、60日、場合によってはそれ以上のタイムラグがあります。
売上が伸びるほど売掛金が膨らみ、帳簿上の利益が出ても、現金回収は後ろにずれます。
ここで見落とされやすいのは、売上増がそのまま一時的な運転資金需要を生むことです。
受託開発では、検収前でも外注費や人件費は先に発生します。
Web制作や開発受託で案件獲得を急ぐ局面では、広告費や採用費が前払いになりやすい。
つまり、資金が薄くなる順番は「売上不振だから」ではなく、「先払い負担が重なったから」であることが少なくありません。
法人税等の確定申告書は原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内に提出し、納付も同期限までに行います。
消費税・地方消費税も、法人では原則として課税期間終了の日の翌日から2か月以内の申告・納付です。
前期の確定消費税額によっては中間申告が必要になる場合もあります。
したがって、3月末時点の残高は、そのまま自由に使える資金ではありません。
問題は「赤字か黒字か」ではなく、納税見込みと未払費用を差し引いたあと、固定費を何か月分カバーできるかです。
利益が出ていても、売掛金の増加と納税で現金が削られるなら、判断は別になります。
PC購入、広告前倒し、外注の先行発注、決算賞与などは、費用化できても現金は減ります。
なお、使用人に対する決算賞与は、一定の要件を満たしたものが損金算入の対象になりますが、税務上の取扱いと資金繰り上の安全性は別問題です。
計算はシンプルです。
3月末預金見込 − 4〜5月に出る未払費用 − 納税見込額 = 実質キャッシュ
ここでいう納税見込額には、法人税等だけでなく、消費税の確定納付や中間納付の有無も含めて見ます。
実質キャッシュ ÷ 月間固定費 = 固定費カバー月数
重要なのは、「あといくら足りないか」ではなく「あと何か月持つか」です。
実務上は、この月数が3か月を切る局面と、6か月を切る局面では、借入・採用・投資の判断の重さが変わります。
これは業界平均ではなく、自社の耐久力を見るための社内基準です。
前年同月比で、売掛金、外注未払、広告費前払い、採用費、着手前後の原価負担がどう増えたかを見る。
売上が伸びているのに資金が減る会社は、この増加幅を見ていないことが多いです。
SESは月次売上が読みやすい一方、入金サイトの影響を受けやすく、人件費が先に固定化しやすい構造です。
稼働率が落ちた月より、むしろ人員を増やした直後のほうが資金が薄くなることがあります。
売上の安定感に比べて、キャッシュの余力は見誤りやすい業態です。
受託開発は、案件ごとの検収条件、外注比率、前受金の有無で資金構造が大きく変わります。
P/Lが悪化していなくても、検収前の工数投入と外注費支払いが先行すれば、資金は先に細ります。
売上の見え方より、案件別の入出金設計を優先すべき場面があります。
年商5,000万円前後の開発会社。3月決算前の試算表では黒字見込み。
ただし、4月以降に消費税・法人税等の納付、採用費、外注費の支払いが重なり、3月末着地キャッシュを置き直すと、固定費カバー月数は2〜3か月台でした。
この会社で論点になったのは、「いくら借りるか」ではなく、
資金戦略で先に決めるべきなのは調達手段ではなく、月数で見た耐久力です。
そこが曖昧なまま借入だけを検討しても、判断の精度は上がりません。
3月決算前の論点は、利益が出るかどうかではありません。
3月末に、納税と未払費用を織り込んだあと、何か月持つのかです。
SES型と受託開発型では、売上の見え方よりも、資金の薄くなり方が違います。
だからこそ、年商規模だけで安全水準を決めることはできません。
入金サイト、外注比率、稼働率、前払い費用、納税タイミングまで含めて、自社の構造で判断基準を設計する必要があります。
資金戦略は、一般論で決められるものではありません。
同じIT受託会社でも、入金サイトや固定費構造によって最適解は変わります。
重要なのは、「借りられるか」ではなく「今、借りるべきか」を判断できる状態をつくることです。
まずは自社の数字を整理することから始めてみてください。
※本事例は実際の相談内容をもとに再構成したモデルケースです。守秘義務の観点から一部表現を調整していますが、判断の構造自体は実務に基づいています。
・申告と納税/国税庁/https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/06_1.htm
・No.6137 課税期間/国税庁/https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6137.htm
・No.6609 中間申告の方法/国税庁/https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6609.htm
・C1-1 法人税及び地方法人税の申告(法人税申告書別表等)/国税庁/https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/01.htm
・No.5350 使用人賞与の損金算入時期/国税庁/https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5350.htm
当事務所は、IT受託会社について、
借入後の返済、入金時期、人件費や外注費の支払い、採用予定などを見ながら、
借入、返済、採用、投資の判断をしやすくする支援を主に行っています。
そのため、次のような方に向いています。
・売上はあるが、手元のお金に不安がある
・借入だけでなく、返済や今後の採用までふまえて考えたい
・その場しのぎではなく、これから先の資金の流れを整理したい
・単発の答えではなく、経営判断に使える形で見直したい
一方で、次のようなご相談は対象外です。
・情報収集だけを目的としたご相談
・一度だけ答えを聞いて終わるご相談
・個人事業主の方からの一般的なご相談
・経理代行や事務処理の外注先を探しているご相談
初回面談は、オンライン60分・税込11,000円です。
初回面談では、
今の状況、ご相談の目的、借入や返済の状況を確認しながら、
何が今の資金負担になっているか
どの支援が合いそうか
を一緒に整理します。
まずは、対象に当てはまるかをご確認のうえ、お問い合わせください。
自分が対象か確認して問い合わせる
🍃ご相談方法について
◎現在、電話相談は承っておりません。
お手数ですが、問い合わせフォームからご相談ください。
24時間365日受付
対応地域
全国対応