行政書士
佐野 雅彦
行政書士事務所ACTION代表。
IT受託会社の借入・返済・追加融資・資金繰りを一体で見ながら、
その場しのぎではない資金の整え方を支援しています。
地方公務員として25年間、制度運用と相談対応に携わった経験を踏まえ、
現在は、返済を続けながら次の借入や投資を進められるかという視点で、記事監修と実務支援を行っています。
このページでは、IT受託会社の経営者に向けて、借入・返済・追加融資・投資判断まで見据えた資金戦略の実務情報を掲載しています。
[1.IT受託会社向け資金戦略]
取適法の改正点を踏まえ、IT受託会社の資金繰りを3月末着地キャッシュと資金余力○か月で再点検するための判断基準を整理します。
目次
IT受託会社専門|資金戦略を設計する行政書士・外部CFO型パートナー
3月決算が近づく時期、経営者の頭に浮かびやすいのは「今期の売上は着地しそうか」という論点です。
ですが、IT受託会社の資金繰りは、売上の見え方よりも、3月末時点で現金が何か月分残るかで景色が変わります。
大型案件の検収が4月にずれ、外注費だけが先に出ていく。
あるいはSESの稼働率が一時的に落ち、請求は細るのに人件費は変わらない。
借入判断が遅れるのは、多くの場合、赤字だからではなく、月次の資金構造を見ないまま、損益計算書(P/L)で考えてしまうからです。
取適法は、2026年1月1日に施行された下請法改正であり、手形払の禁止や、電子記録債権・ファクタリング等でも支払期日までに代金満額相当の現金を得ることが困難な方法を認めない方向性を明確にしました。
もっとも、この法改正はIT受託会社の資金構造そのものを軽くする制度ではありません。
見るべきなのは、法改正の有無より、自社の現金化の速度です。
公正取引委員会の案内では、取適法の対象取引には情報成果物作成委託や役務提供委託が含まれ、プログラム作成や情報処理も例示されています。
また、支払期日は受領日から起算して60日以内という原則が引き続き重要です。
つまり、IT受託会社に関係し得る制度であることは確かです。
ただ、ここで誤解しやすいのは、「60日以内なら資金繰り上は大して問題ではない」と見てしまうことです。
実務では、検収の遅れ、月末締めの運用、請求処理のラグで、現金が手元に来るまでの体感はもっと長くなります。
受領日基準の法規制は重要ですが、それだけで3月末の現金残高は決まりません。
IT受託会社では、検収から請求、請求から入金までの間に、給与、外注費、社会保険料、広告費、クラウド費用が先に出ていくからです。
受託開発型は、検収基準の色が強いほど、売上計上の見通しと現金化のタイミングがずれやすくなります。
外注費が先払いになりやすく、追加開発や検収差戻しが起きると、PL上は見えていても現金は入らない、という局面が出ます。
広告運用や制作を絡める会社では、広告費前払いも重なるため、案件が積み上がるほど資金が厚くなるとは限りません。
SES型は、売上の予見性が高く見える一方、稼働率が下がった月の影響がすぐ資金に出ます。
請求単価が読めても、待機が増えれば翌月の入金が細る。
にもかかわらず、人件費は固定的に出ていく。
受託開発より急落は小さいが、じわじわ資金余力を削るのがSES型の特徴です。
売上の安定感だけで借入判断を遅らせると、気づいた時には「あと何か月持つか」の説明ができなくなります。
取適法は、受注側に不利な支払手段を抑える点で意味があります。
しかし、これは「より悪い後ろ倒し」を防ぐ制度であって、入金サイトや検収ラグそのものを短縮する制度ではありません。
制度対応と資金戦略は別の仕事です。
3月決算前に見るべきなのは、利益ではなく、3月末の着地キャッシュです。
利益が出ていても、4月入金の案件が多く、3月に賞与・納税・外注費支払いが重なれば、資金余力は薄くなります。
逆に、利益が弱くても、前受金や短い入金サイトがある会社は持ちこたえます。
ここを混同すると、借入判断がいつも後手になります。
まず置くべき指標は、固定費カバー月数です。
計算式は次のとおりです。
現預金 ÷ 月間固定費 = 固定費カバー月数
ここでいう固定費は、人件費、役員報酬、家賃、社会保険料、業務に不可欠なシステム費など、売上が落ちても止まりにくい支出を指します。
次に、資金余力○か月を見ます。
これは、現預金を単に固定費で割るだけでなく、今後2〜3か月で発生が見えている外注費先払い、広告費前払い、税金、賞与、借入返済を織り込んだうえで、「実質的に何か月持つか」を見る考え方です。
実務上、判断の起点としては、
1か月未満なら緊急対応の検討、
2〜3か月なら借入判断を先送りしない水準、
4か月以上なら選択肢を比較しやすい水準、
という見方を置くことがあります。
これは制度上の基準ではなく、あくまで自社の入金サイトと固定費構造を前提にした実務上の目安です。
案件集中、検収遅延、外注比率の高さによって、同じ3か月でも危険度は変わります。
年商6,000万〜9,000万円、社員4〜7名、受託開発とSESが混在する会社を考えます。
3月末時点の現預金は1,200万〜1,600万円、月間固定費は300万〜380万円。見かけ上は3〜5か月分に見えます。
しかし、4月前半に外注費と社会保険料、月末に返済、加えて検収予定1件が翌月にずれると、実質の資金余力は2か月台まで下がることがあります。
ここで考えるべきは「あと300万円足りない」ではなく、「この構造で2か月台に入る前に借入判断を置くべきか」です。
論点は、調達の可否より、判断の時点を設計できているかにあります。
SES型は、稼働率の低下が翌月以降の請求に反映されやすく、固定費が残る分だけ資金が薄くなります。受託開発型は、検収遅延と外注費先払いが重なると、1件のずれが資金余力を大きく削ります。どちらが有利という話ではありません。
重要なのは、売上の安定性ではなく、資金が薄くなる速度と戻る速度です。この見立てがないまま借入を考えると、「借りられるうちに借りる」か「苦しくなるまで借りないか」の二択になりやすい。資金戦略は、その間にある判断線を引く作業です。
取適法の施行によって、手形払や、支払期日までに代金満額相当の現金を得ることが困難な支払方法への規制は明確になりました。
これは受注側にとって無視できない制度改正です。
もっとも、IT受託会社の資金繰りを左右する本質は、なお検収から入金までの時間差、外注費先払い、人月稼働の変動、そして3月末時点での現金残高にあります。
制度を知るだけでは、借入判断は設計できません。
必要なのは、自社の案件構成、入金サイト、固定費、先払い支出を並べて、「今の現金で何か月持つか」を説明できる状態をつくることです。
※上記事例は実際の相談内容をもとに再構成したモデルケースです。守秘義務の観点から一部表現を調整していますが、判断の構造自体は実務に基づいています。
資金戦略は、一般論で決められるものではありません。
同じIT受託会社でも、入金サイトや固定費構造によって最適解は変わります。
重要なのは、「借りられるか」ではなく「今、借りるべきか」を判断できる状態をつくることです。
まずは自社の数字を整理することから始めてみてください。
当事務所は、IT受託会社について、
借入後の返済、入金時期、人件費や外注費の支払い、採用予定などを見ながら、
借入、返済、採用、投資の判断をしやすくする支援を主に行っています。
そのため、次のような方に向いています。
・売上はあるが、手元のお金に不安がある
・借入だけでなく、返済や今後の採用までふまえて考えたい
・その場しのぎではなく、これから先の資金の流れを整理したい
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一方で、次のようなご相談は対象外です。
・情報収集だけを目的としたご相談
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初回面談は、オンライン60分・税込11,000円です。
初回面談では、
今の状況、ご相談の目的、借入や返済の状況を確認しながら、
何が今の資金負担になっているか
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